あわいを往く者

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雑種の少女の物語

 
雨の夜、陵辱された少女は狂気に取り憑かれて街を去る。
精神の抜け殻となってさまよい歩いた少女は地下迷宮と化した古代都市へとたどり着き、狂人のまま魔物たちの姫君として祭り上げられていく。
(サイトの紹介文より)
 
 恐怖と絶望に蹂躙された少女は、狂気を供に魔の森へと迷い込む。
「語り部」の穏やかな語り口とは裏腹に、物語の始まりはあまりにも衝撃的です。控えめな描写にもかかわらず、なまじ文章が流麗なだけに、おぞましい出来事はするすると脳内に注ぎ込まれ、脳裏に結ばれる情景は目を背けてしまいたくなるほど。
 ですが、仄かな明かりがひとつ、ふたつ、と地下迷宮の中に灯り始めるにつれ、みるみるこの物語の虜となってしまいました。
 闇は光に、不幸は幸せに、恐怖は愛に。白虎や山羊頭といった魔物達が素敵でね。いわゆる冒険者として相対したらば、死ぬほど恐ろしい敵のはずなのに。人間と魔物、異なる二つの価値観のはざまで穏やかな日々を送る「雑種の少女」の可愛いこと。
 やがて運命の歯車が軋みながら回り、物語は容赦なく終焉を迎え、そうして気づくのです。誰もが――読者であるはずの自分さえもが――物語の登場人物となっていたことに。……うわー、やられた。気持ちよく、してやられた。ほんと最高。
 嗚呼、「雑種の少女」に幸あれ!

 この物語は、前にご紹介した図書館ドラゴンは火を吹かないの前身ともいえる作品だそうです。図書ドラが気に入った方は是非こちらの物語も読んでみてください。でもって、図書ドラ未読でこの物語が気に入った方には、全力で図書ドラをお勧めしますぞ。

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