あわいを往く者

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タグ別 » 伝奇

白痴のダンテ

 
 西洋の文化が大量に流入し始めたばかりの極東の国。
 文化は好むが異国人はまだまだ珍しい。
 そんなご時世に、ある薄暗いライブハウスに奇妙な異国人ジャズバンドが現れる。
 音楽をたしなむ青年:伊達は彼らの音楽を聴いたあるトランペッターが狂死したことから、彼らの存在を知る。
 曰く、悪魔の音楽を奏でるものども――と。
(サイトの紹介文より)
 
 〈悪魔の音楽〉を奏でるというジャズバンド・オーリム。機会を得てオーリムの末席に加わることになった伊達は、並々ならぬ彼らの音楽への情熱にあてられながら、才能を開花させてゆく……のだが。
 時に激しく、時にひそやかに、端正に、狂おしく、恍惚と歓喜の声を上げる楽の音。ひたひたと足元に忍び寄る不穏な気配。「全ては音楽のために」との囁きとともに伊達に突きつけられた、恐るべき選択肢。バンドメンバーの過去を、オーリムの真実を知った伊達――ダンテ――が、おのれの道を見出し、真っ直ぐに進んでいく姿に胸が熱くなりました。
 物語そのものにも心が惹かれましたが、それと同じぐらい、文章にも心を揺り動かされました。まるで本当に音が聞こえてきそうな演奏の描写。音を読み手の脳内に呼び覚ますように描き出すばかりか、音楽に対する想いや思想をも含めた「音」の一切合財を、これでもか、と読み手に突きつけてくるがごとき文章は、鳥肌ものです。
 音楽家への、そしてあまねく表現者への、愛溢れる物語、ご馳走さまでした!

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雑種の少女の物語

 
雨の夜、陵辱された少女は狂気に取り憑かれて街を去る。
精神の抜け殻となってさまよい歩いた少女は地下迷宮と化した古代都市へとたどり着き、狂人のまま魔物たちの姫君として祭り上げられていく。
(サイトの紹介文より)
 
 恐怖と絶望に蹂躙された少女は、狂気を供に魔の森へと迷い込む。
「語り部」の穏やかな語り口とは裏腹に、物語の始まりはあまりにも衝撃的です。控えめな描写にもかかわらず、なまじ文章が流麗なだけに、おぞましい出来事はするすると脳内に注ぎ込まれ、脳裏に結ばれる情景は目を背けてしまいたくなるほど。
 ですが、仄かな明かりがひとつ、ふたつ、と地下迷宮の中に灯り始めるにつれ、みるみるこの物語の虜となってしまいました。
 闇は光に、不幸は幸せに、恐怖は愛に。白虎や山羊頭といった魔物達が素敵でね。いわゆる冒険者として相対したらば、死ぬほど恐ろしい敵のはずなのに。人間と魔物、異なる二つの価値観のはざまで穏やかな日々を送る「雑種の少女」の可愛いこと。
 やがて運命の歯車が軋みながら回り、物語は容赦なく終焉を迎え、そうして気づくのです。誰もが――読者であるはずの自分さえもが――物語の登場人物となっていたことに。……うわー、やられた。気持ちよく、してやられた。ほんと最高。
 嗚呼、「雑種の少女」に幸あれ!

 この物語は、前にご紹介した図書館ドラゴンは火を吹かないの前身ともいえる作品だそうです。図書ドラが気に入った方は是非こちらの物語も読んでみてください。でもって、図書ドラ未読でこの物語が気に入った方には、全力で図書ドラをお勧めしますぞ。

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「デビィ&レイ」シリーズ

不思議な世界へ扉を開けて  
賞金首のヴァンパイア、レイと元人間のゾンビ、デビィはハンターに追われ、様々な町を転々としながら様々な事件に巻き込まれていく。ロード・ムービータッチの連作ホラー(一話読みきり)です。(サイトの紹介文より)
 
 とある理由でモンスター達が人間に紛れて存在する、パラレルワールド・アメリカ。異形のものどもに脅威を感じた人類社会は、モンスターを狩るハンターという存在を合法化した、んだけど、でもちょっと過剰防衛じゃないの、という世界で生き抜くモンスター達の物語。
 クールで見た目も美しく、文字通り超人的な能力をふるうレイですが、12歳まで人間として育てられたせいもあるのか、時々やたら人間臭い面が顔を出すのが素敵です。ギャップ萌え!
 対するデビィは、不幸な事件に巻き込まれるまではフツーに大学生をしていただけあって、基本はフツーの青年で、でも、ここぞという時にはタフさを発揮するナイスガイ。
 題材が題材ですので、ちょっと血が吹き出したり腕が飛んだり内臓がはみ出たりすることがありますが、アメリカドラマやバディものが好きな人にお勧めですv

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21時のサウナルーム

憧憬アンプ  
――ひとッ風呂、浴びて帰りたい気分だった。(サイトの紹介文より)
 
 彼女にフられ、傷心を癒やすべくスーパー銭湯にやってきた「俺」を待ち受けていたのは、「サウナの神様」だった……。
 その場に居合わせた五人の男達の目の前で、なし崩し的に切って落とされる、戦いの火蓋。暑苦しくも熱き勝負の行方や如何に。端々に遊び心の効いた軽やかな筆致に、するすると読み進めていくうちに、気がつけば感動の渦に呑み込まれてしまっていました! まさか、サウナで汗を流す全裸の野郎の姿に、涙することになろうとは……。
 楽しく読んで、ほろりとして、あとがきまで美味しくいただきました。ご馳走さまでした。

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みなぎる豆腐小僧

階
  • 作者:ろく 様
  • 掲載サイト:
 
扇屋の前にネオ豆腐小僧が現れた(サイトの紹介文より)
 
 堅実に、そしてリズミカルに綴られた文章には、全く隙がありません。そんな端整な文体で書かれた、渾身のアホ話(褒め言葉)です。これぞ究極のギャップ萌え。ストイックにふざけてみせる絶妙なさじ加減が、とっても心地よいです。
 読んでいて、本気で声を出して笑ってしまいました。もう、最高。大好き。
(サイトトップから、NOVEL→短編→和風 に掲載されています。同じシリーズに「垢舐めが自重しない」と「ろくろ首が荒ぶっている」があり、どれもとっても面白いですv)

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Sustainability(サステイナビリティ)

  • 作者:シュンイチ 様
  • 掲載サイト:毎日小説を書く R18
     (閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写・残酷描写あり
 
 それは、刹那とすら言い表せない瞬く間の出来事。
 気が付いた時には、辺りは一面の血の海と化していた。
 
 プロレスラー志望の高校生・森嶋学が、武術の心得のある同じ学校の女子・大貫明日見とともに巻き込まれた、凄惨な事件。帯剣した謎の老人、それを追う男、暗躍する組織……。
 絡み合う糸が解きほぐれた最後の場面、思わず感嘆の溜息がもれました。謎解きの爽快感は、ミステリさながらです。血みどろな表現に抵抗のない方、是非読んでみてください。
 一部、性風俗がらみの描写がありますが、対照的に主人公コンビの爽やかさたるや、もどかしいほど。もう、明日見ちゃんが凛々しくてカッコイイんですよ!(力説

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輪廻の花

Cheerful!
  • 作者:日向そら 様
  • 掲載サイト:Cheerful! R18
  • 備考:一部性描写あり
 
突然目の前に現れた、式神多々羅。
「嫁に貰う約束だった」と言い張る多々羅に困惑する環。
前世と現世の因縁とは……?
(サイトの紹介文より)
 
 現代舞台の伝奇物です。大鏡神社の一人娘である高校生の環が、ふとした事で解いてしまった封印。現れた式神・多々羅とともに、彼女は破邪の剣を手に、心の弱い人間を蝕むという瘴気を祓う使命を背負う事になるのです。
 迷いながらも困難に真っ向から立ち向かう彼らのひたむきな眼差しと、軽妙な語り口が、重苦しくなりがちなテーマをどんどん読ませてくれます。
 絡み合った伏線が、すうっと一本にまとまっていくさまは、爽快の一言。
 個人的に、シリアスなシーンでも下心を忘れない多々羅が大好きですv

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