あわいを往く者

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EARTH FANG

The Spirit of the Mystic Valley  
新石器時代のシベリア。神霊を敬いながら暮らす〈森の民〉のもとへ、南から、太陽神を信仰する開拓者たちがやってきた。友好の使者として送られたマシゥと、狩人の青年ビーヴァの、友情と闘いの物語。
狩猟民族、シャーマニズム、シベリア諸民族の民話・神話を題材にしています。
(サイトの紹介文より)
 
 シベリア風の世界を舞台に、異なる文化・価値観を持つ二つの民族が出会い、衝突し、どうしようもない状況に陥りながらも、それでもより良き未来を求めて足掻く人々の物語です。
 森を敬い、森を構成する一員として大自然に寄り添うようにして生きる森の民に対して、比較的温暖な南方出身の、森を切り拓き大地を耕し、大自然をも征服しようとする開拓者達。王の使者として少し遅れて開拓団に合流したマシゥは、森の民の狩人ビーヴァと親交を結び、彼らの生きざまを理解してゆく……のです、が。
 丁寧な筆致が、人々の生活や文化、信仰をあますところなく描き出すと同時に、血なまぐさい民族間の対立を容赦なく眼前に突きつけてくれます。寒冷地の厳しくも豊かな森の景色も、まるで目に見えるよう。
 人と自然との関わりを描いた壮大なる叙事詩、堪能させていただきました。

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アイオライトの心臓

 
異常な痣とともに少年ロクドは生まれた。
左の指先から手首までを、深い深い暗闇の沼に浸したような、異常な痣──それは、彼の人生を決定づける、忌まわしい呪いの印だった。
呪いを解くため、そして再び家族とともに暮らすため、少年は旅に出る。
魔術師カレドアのもとで修行を積みながら手がかりを探すロクドだったが、ある静かな夜、街で奇妙な少女に出会い……。
大陸の北西に位置する架空の国家を舞台とした、呪いの謎を紐解く魔法と貴石の正統派ボーイミーツガール系ハイ・ファンタジー。
(サイトの紹介文より)
 
 故郷の地に埋められていた禍の種を一身に引き受けた少年ロクドと、あまり他人と深く関わろうとしない魔術師カレドアが、ひょんなことから結んだ師弟の縁。光纏う不思議な少女との邂逅を経て、そこにもう一組の魔術師師弟の軌跡が重なり、やがて呪いの謎は、五百年前に葬り去られた悲劇を炙り出す。
 瘴気の大平原、光の神の加護を受け何百年と回り続ける風車、ひたひたと近づいてくる恐るべき奇病、悲劇、そして破滅。物語そのものもとても好みですが、それを支える世界観にも興味を惹かれました。カレドアが魔術についてロクドに語る場面の、なんとわくわくすることか!
 それに加えて、登場人物達がまた魅力的で。師弟コンビのなんとなく血圧低めな関係は言わずもがな、例の魔術師の兄弟弟子コンビのバディっぷりにも心臓を射抜かれました。いやあ、いいわあ、むっちゃ好き。
 読み応えたっぷりの正統派ファンタジー、とても美味しかったです。

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金枝を折りて

Windy Hill  
田舎村の少年シェイダールは神託により父を喪った。以来、神はいないと信じている。だがそんな彼が、新たな王の候補者に選ばれた。神の力を身に宿す王、その力を受け継ぐべき者として。
いもしない神に支配される国など変えて見せる――決意と共に王宮へ向かったシェイダールの前に、王殺しの儀式と太古のわざが立ちはだかる。
謎と秘密、絡み合う思惑の中を手探りで進む彼が目指すのはひとつ。
「もう誰も、神のために死ななくていい国を」
(サイトの紹介文より)
 
 神のちからを用いて政を執り行う王。その後継者は世襲に依らず、ちからの器たるべき資質によって決定される。類稀なる能力を見出され跡目候補の一人として選ばれたシェイダールは、神を信じないがゆえに初めのうちこそ反発するものの、人々の幸せのために、大切な人の命を守るために、いにしえの秘術の謎に立ち向かう。
 ともに苦難を乗り越え信頼を築く主従の他、登場人物達がとても魅力的で、各所で萌えツボを突かれまくりました! が、やはり特筆すべきは、色や音、《詞》を使う神秘の術、ウルヴェーユ(彩詠術)。読むほどに、見えるはずのない「ちから」がまざまざと脳裏に浮かび上がってくるようです。
 信仰と人智と、感情と理性と。物語を楽しみながらも、神秘のわざが炙り出す幾つもの命題を考えさせられずにはいられません。
 激動の果てに迎えたラストシーン、かつての彼らの姿が思い出され、目頭が熱くなりました。

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雑種の少女の物語

 
雨の夜、陵辱された少女は狂気に取り憑かれて街を去る。
精神の抜け殻となってさまよい歩いた少女は地下迷宮と化した古代都市へとたどり着き、狂人のまま魔物たちの姫君として祭り上げられていく。
(サイトの紹介文より)
 
 恐怖と絶望に蹂躙された少女は、狂気を供に魔の森へと迷い込む。
「語り部」の穏やかな語り口とは裏腹に、物語の始まりはあまりにも衝撃的です。控えめな描写にもかかわらず、なまじ文章が流麗なだけに、おぞましい出来事はするすると脳内に注ぎ込まれ、脳裏に結ばれる情景は目を背けてしまいたくなるほど。
 ですが、仄かな明かりがひとつ、ふたつ、と地下迷宮の中に灯り始めるにつれ、みるみるこの物語の虜となってしまいました。
 闇は光に、不幸は幸せに、恐怖は愛に。白虎や山羊頭といった魔物達が素敵でね。いわゆる冒険者として相対したらば、死ぬほど恐ろしい敵のはずなのに。人間と魔物、異なる二つの価値観のはざまで穏やかな日々を送る「雑種の少女」の可愛いこと。
 やがて運命の歯車が軋みながら回り、物語は容赦なく終焉を迎え、そうして気づくのです。誰もが――読者であるはずの自分さえもが――物語の登場人物となっていたことに。……うわー、やられた。気持ちよく、してやられた。ほんと最高。
 嗚呼、「雑種の少女」に幸あれ!

 この物語は、前にご紹介した図書館ドラゴンは火を吹かないの前身ともいえる作品だそうです。図書ドラが気に入った方は是非こちらの物語も読んでみてください。でもって、図書ドラ未読でこの物語が気に入った方には、全力で図書ドラをお勧めしますぞ。

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図書館ドラゴンは火を吹かない

 
 財宝の番人として古今に名高いドラゴン、その一頭であるリエッキが守るのは今は亡き司書王の図書館だった。
 書物の庇護者たる彼女は、火竜であるにもかかわらず決して炎を吐かなかった。
 炎は本を燃やすものと、そう断じて。
(サイトの紹介文より)
 
 物語好き、本好きならば、喰いつかずにはいられない、ストーリーテリングという魔法。その威力たるや、物語の外側にいるはずの我々読み手すら、虜にしてしまうほど。複数の時間軸を自在に行き来する語りに、心地よく踊らされます。
 少女の姿に身をやつした火竜と、その「親友」である比類なき語り部の、絆の深さに何度も泣かされたかと思えば、因縁の宿敵「左利き」のアンビバレンスに萌えいやむしろ燃え、「相棒」の空気を読まないハイテンションっぷりに癒やされ(ええ、大いに癒やされ)、そして何より美しい文章そのものにも酔いしれました。
 
 それでは、説話を司る神の忘れられた御名において――はじめましょう。
 
 
書籍化されました! 紙の本として是非お手元にどうぞ!

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交叉軌道

エメラルド☆ファンタジア  
兄と俺とハルの人生が交叉する。甘苦くて切ない恋物語。(サイトの紹介文より)
 
 優秀で完璧な兄・優と、兄を追うことを諦めた主人公の良、良の元同級生である兄嫁ハル、の三人が織りなす、切なくて、痛くて、でもどこか優しい物語です。
 成績優秀で運動万能に加えて容姿端麗な人気者、という、歩くカリスマな兄に対する良の複雑な感情が、読んでいて胸に迫ってきます。
 物語も魅力的ですが、それを綴る文章がまた私の好みど真ん中で。「兄が放つ光と引力は、容赦なくハルの軌道を撓(たわ)めた。」とか、たまりませんv タイトルをはじめとして、天体にまつわる比喩表現が多く使われているのですが、それが情景や心情にしっくりと馴染んでいるのが心地よくて、読みはじめたら最後まで一気読みでした。

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六條院の娘たち

 
本人の意向そっちのけで、年頃になると父の野心の道具となって、父が決めた『家』に嫁がされる娘たち。とはいえ、父の言いなりにはなっても大人しくわが身の不幸に甘んじているようなしおらしい性格をしている娘はひとりもいなかった。
結婚は父の都合、幸せになるのは自分の勝手♪ 産みの母親と性格の違う娘たちのそれぞれの恋模様。
(サイトの紹介文より)
 
 舞台は、1970年代の日本。「成り上がりの大金持ち」六条家の娘達に持ちかけられる、家同士の縁組の中で、自らの幸せを模索する彼女達の物語……なんて、通り一遍の説明では、このシリーズの魅力は語りきれません。
 我が身に降りかかる困難を、その芯の強さで乗り越えていく六条家のお嬢さん達が素敵なのは勿論のことですが、何より、彼女達の父親、六条源一郎という存在が、とてもいい味を出しているんです。彼の行き過ぎた親馬鹿が引き起こす騒動が、この物語の要だと言っても過言ではありません。
 焦れ焦れしたりほのぼのしたりする恋物語の間に差し挟まれる、企業経営にまつわる話もとっても面白いですv

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