あわいを往く者

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WEB小説リンク集

和菓子さま 剣士さま

日々楽々  
高三でようやく青春することができた慶子さんと
和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。
季節の和菓子も出てきます。
(サイトの紹介文より)
 
 部活に進路に悩む高校生の日常を描く、青春群像です。丁寧でしっとりとした語り口が、まさしく上品な和菓子のようで、もう、いくらでもおかわりしたくなります。
 特筆すべきは、穏やかでおっとりとした慶子さんの、最強天然ぶりです。嫌味も無ければ、わざとらしくもない、読み進めるほどに、慶子さんが慶子さんである事に深く頷き、そしてホロリとさせられてしまう。そんな彼女の目を通して見た世界の、なんと愛しい事か。
 全編を通じて慶子さん視点の情景にもかかわらず、他の登場人物の心情が読み手にきっちり伝わってくるのが、また素晴らしくて。彼女ならではの独白も合わせて、隅々まで楽しませていただきました。

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夏の女王

鈴の鳴る場所呟きの歌  
――私は女王の国にいる。(サイトの紹介文より)
 
 ほんの少しだけ未来――いつ現実と重なってもおかしくない、未だ来たらぬ世界――のお話です。
 静かに語られる、夏の思い出話。見慣れた懐かしい風景が、少しずつ、少しずつ、既知のものから乖離していくさまに、すっかり虜になりました。淡々とした文章に変わりはないのに、途中訪れるカタルシスはあまりにも劇的で、一瞬にして鳥肌が立ちました。今でも、思い出すだけでみぞおちの奥が締め付けられるような気がします。
 ぎらぎらとまばゆい日差しの中、紆余曲折の果てにそれでも前を見つめる主人公の姿が、とても美しいです。
 昔懐かしい翻訳SFを彷彿させる雰囲気も、もろにツボに嵌まりましたv

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ノヴァゼムーリャの領主

ぷんにゃごぱぁくす  
エルファラン国最北、貧しいノヴァの地に風変りな領主がやってきた。黒衣に身を包み仮面で素顔を隠す若い貴族、レーニエ。国境警備隊長ファイザルは静かに領主を見守るが(サイトの紹介文より)
 
 ファンタジーでも、魔法などの超常的なものは出てこない、どちらかといえば架空の国を舞台とした、ヒストリカル・ロマンスに近い物語です。
 数奇な運命に翻弄された者と、凄惨な過去を背負った者が、出会い、心を通わせてゆく様子を縦糸に、人々の生きざまや隣国との戦争が織り込まれて、見事なタペストリーを作り上げています。特に、北の大地とそこに暮らす人々の様子が筆致豊かに描かれていて、風景描写オタクとしては、それだけでもう大満足ですよv
 歳の差ロマンスの他、主従関係だとか、暑苦しい男の友情だとか、手に汗握る剣戟とか、萌えドコロいっぱいです。

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愛などない / 30度の傾斜角

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
真面目で厳格な女教師・一乃だったが、生徒会長・白倉の罠に嵌められ、翻弄される。白倉の思惑とは…?(サイトの紹介文より)
 
「愛などない」と「30度の傾斜角」。この二つは、二人の出会いにまつわる出来事を、それぞれの視点で描き出した、表裏一体の物語です。
 同シチュエーションを男女双方の視点で描く手法は、決して珍しいものではありません。語り手の視野を狭める事で、お互いの人物像にそれぞれ齟齬を生じさせ、「あの時コイツってばこんな事を思ってたんだ」的な意外性をもって、読者を引き込む技法です。
 ところが、この二作の場合、それぞれ主人公の目を通して物語が展開しているにもかかわらず、相手の心情が読み手にも充分伝わってくるのです。まず、これが凄い。どちらを読んでも、一乃さんは一乃さんであり、白倉氏は白倉氏なんです。お互いの表情も、そこから読み取る事の出来る感情の起伏も、二つの作品でブレる事はありません。
 なのに、「30度の傾斜角」を読んだ途端、世界の奥行きが一気に広がるのです。白倉氏の人物像にしても、過去について筆を割かれた文字数以上のものが、彼の背後から感じ取れるのです。とにかく、凄い。単純に双方向の視点で物語が二本分、ではなくて、もっともっと沢山の物語が相乗効果で生まれてくる、それが凄い。
 
 とにかく、予断無しで作品世界に浸っていただけたら。と、いつもにも増して抽象的な紹介文で失礼いたします。

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Sustainability(サステイナビリティ)

  • 作者:シュンイチ 様
  • 掲載サイト:毎日小説を書く R18
     (閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写・残酷描写あり
 
 それは、刹那とすら言い表せない瞬く間の出来事。
 気が付いた時には、辺りは一面の血の海と化していた。
 
 プロレスラー志望の高校生・森嶋学が、武術の心得のある同じ学校の女子・大貫明日見とともに巻き込まれた、凄惨な事件。帯剣した謎の老人、それを追う男、暗躍する組織……。
 絡み合う糸が解きほぐれた最後の場面、思わず感嘆の溜息がもれました。謎解きの爽快感は、ミステリさながらです。血みどろな表現に抵抗のない方、是非読んでみてください。
 一部、性風俗がらみの描写がありますが、対照的に主人公コンビの爽やかさたるや、もどかしいほど。もう、明日見ちゃんが凛々しくてカッコイイんですよ!(力説

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Cinnamon

IZAP
  • 作者:なかのうえ 様
  • 掲載サイト:IZAP R18
  • 備考:一部性描写・残酷描写あり
 
 人工生命体のティエに課せられた、新たなる実験。それは、少女にとってはあまりにも過酷なものであった。彼女の生みの親である遺伝学者ネルソンが、苦渋の果てに選んだ道は……。
 
 SF風味な異世界を舞台にした、不器用な研究者と健気な実験体の少女の物語です。運命に翻弄されるがままに、ゆっくりとその距離を詰める二人。その行く末で待つものを知った時の、あの衝撃は言葉に言い表せません。冷静に組み上げられた物語に完全に呑み込まれました。
 一部残酷な場面がありますが、それゆえに、いのちは光り輝くのです。後日談の『Coffee』もお忘れなく。

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忘れてしまおう

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
君が好きでした、とてもとても。
けれどもう、忘れてしまおう。

 
 冒頭のこの一文を読んだだけで、見事に心を持って行かれました。
 若名千鶴がふとしたはずみで学校の下駄箱で見つけた紙片に記されていた、恋文。僅か数文字のその文章が、彼女と、彼女を取り巻く人々との関係を、静かに静かに変化させていきます。
 恋に恋する年代の、どこか夢見がちで、そのくせ妙に現実的な複雑な気配を、しっとりとした筆致が見事に描き出しています。何よりも特筆すべきは、その恐るべき構成力! 読み進めるほどに、鳥肌が立つ思いに襲われました。

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輪廻の花

Cheerful!
  • 作者:日向そら 様
  • 掲載サイト:Cheerful! R18
  • 備考:一部性描写あり
 
突然目の前に現れた、式神多々羅。
「嫁に貰う約束だった」と言い張る多々羅に困惑する環。
前世と現世の因縁とは……?
(サイトの紹介文より)
 
 現代舞台の伝奇物です。大鏡神社の一人娘である高校生の環が、ふとした事で解いてしまった封印。現れた式神・多々羅とともに、彼女は破邪の剣を手に、心の弱い人間を蝕むという瘴気を祓う使命を背負う事になるのです。
 迷いながらも困難に真っ向から立ち向かう彼らのひたむきな眼差しと、軽妙な語り口が、重苦しくなりがちなテーマをどんどん読ませてくれます。
 絡み合った伏線が、すうっと一本にまとまっていくさまは、爽快の一言。
 個人的に、シリアスなシーンでも下心を忘れない多々羅が大好きですv

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夕庭

snail-paced
  • 作者:佐藤ひろ 様
  • 掲載サイト:snail-paced
     (2012/12/31閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写あり
 
 彼女が密かに恋焦がれる彼は、幼馴染の少女を想い続けていた。
 彼が惹かれた彼女は、彼の親友でもある幼馴染を慕い続けていた。
 報われない想いを抱える二人の軌跡が、ふとした事で重なり、やがてそれは彼ら四人の関係を静かに変化させていく……。
 
 自分が切望して手に入れられなかったものを、全て持っている(と思われる)人間に対する羨望、そして嫉妬。自分自身を痛めつけてもなお抑え切れなかった感情が、昇華した瞬間の、目も覚めるばかりの夕焼けの美しさに胸を打たれました。
 四者四様の繊細なる心の動きを見事に描き出す筆力には、脱帽です。

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フライディと私

P Is for Page  
雨風がしのげて、食料と水と話し相手兼召使まで用意された無人島に漂着したラッキーな私(ロビン)と、そこで出逢ったフライディの物語。(サイトの紹介文より)
 
 軍属という先輩遭難者の「フライディ」と、高校生の「ロビン」。運命的な出会いを経てバディとなった二人を描くシリーズの、一番最初の物語です。
 一人称という、表現に制約のある手法を使っているにもかかわらず、語り手を取り巻く周囲の気配さえも描き出す、その手腕。全編から漂う、翻訳小説のような雰囲気にも思いっきり酔いしれました。
 と、書き手としての野暮な視点はこれぐらいにしておいて。
 とにかく、勝気で何事にも真っ直ぐなロビンと、彼女に頭の上がらない(という状況を楽しんでさえいる)フライディのやり取りが楽しくて仕方ありません。シリーズを通して、読めば読むほど幸せな気分になれる素敵な物語ですv

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秘密の部屋

ddb
  • 作者:ゴロ 様
  • 掲載サイト:ddb R18
  • 備考:一部性描写あり
 
柚川沙織は16歳。両親に言われ、乗った車の
着いた先は、とても大きく立派な
日本家屋の屋敷だった――――
(サイトの紹介文より)
 
 迷いの無い細やかな文章が描き出す、秘密の、部屋。あれよあれよという間に、どっぷりと物語の中に引き込まれてしまいました。
 理不尽な状況に呑まれつつも、それに屈しない沙織の強さがとても格好良いです。勿論、その他の登場人物もとても魅力的で(まあ、一部例外な方はいらっしゃいますけど:笑)、それ故、それぞれが抱える悲しみや苦しみに、胸を打たれどおしでした。
 感動的で、でもしっかり官能的で、二度美味しいとはまさしくこの事かもしれません。とにかく、言葉責め最高。

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Dr.高辻シリーズ

M2L -Meet to Love-
  • 作者:pea 様
  • 掲載サイト:M2L -Meet to Love-
     (2011/5/31閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写あり
 
美形歯科医師高辻朗(あきら) vs 天然系OL大森みゆきのラヴでコミカルな日常。(サイトの紹介文より)
 
 一見紳士に見えるDr.の、腹黒……じゃなくて明晰な様子や、ひねくれ……じゃなくてクールな態度に、翻弄されるみゆきさんが可愛らし過ぎますv
 Dr.の溢れんばかりの愛情と下心を、明るく軽くさらりと描き出す一方で、ここぞというところで濃厚な筆致が堪りません。
 時に甘く、時にほろ苦く、口当たりは抜群。軽妙でありながら堅実に綴られた物語が、ストライクど真ん中です。

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ツーリングを少々

P Is for Page  
25歳OL 趣味は書道、クジラグッズ集め、それにツーリングを少々(サイトの紹介文より)
 
 どこか泥臭く、体育会系で、それでいて爽やかでカッコイイ。この話を読んで先ず思ったのが、「私もバイクに乗ってみたいかも」でした。
 ある日突然「バイクに乗ろう」と思い立った珠緒が、おろおろしながらも免許を取り、ツーリングに出かける。他愛も無い人生のひとコマに、こんなにも沢山のモノが詰まっているという事にはっとさせられました。過不足の無い文章の見事な事、情景がすうっと頭に入ってくるのも感動です。
 特定の車種の名前を出さない、という作者様のコメントに、同じ事を考える人がいた、と一人喜んでいたのはここだけの話ですv

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コレクター

金曜日は雨がいい  
孤高の怪盗・山猫が残した「コレクション」に因縁アリな男三人。駆け出し盗人のマット、やり手画廊オーナーにして人畜有害な危険物ブルース、裏街道の便利屋フランキー。不本意ながらタッグを組む羽目になった三人が「山猫コレクション」を追う果てに見るものは。(サイトの紹介文より)
 
 直球一本勝負のマットと、慇懃無礼を時々通り越してしまうブルース、無愛想だけどカッコイイ(ファンの欲目)フランキーの、テンポの良い会話と情景豊かな文章が、まるでドラマを見ているかのような気持ちにさせてくれます。
 スリルと冒険の影に覗く、切ない、時に心温まる人間模様。でも、まるっと総括しようとすると、何故かお互いに悪態をつきながら右往左往している三人の姿が浮かび上がってくるという……。とにかく、個性的でタフな三人組がとてもお気に入りなのでしたv

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王都警備隊

Windy Hill  
中世欧州風(?)異世界ファンタジー。王都シエナを舞台にした、元盗人が主人公の似非ミステリ。脱走国王や胃痛病み側近などがレギュラー陣のシリーズ作品。(サイトの紹介文より)
 
「元気で威勢のいい女子」萌えとともに、戦う組織萌え、謎解き萌えのど真ん中を見事に射抜かれてしまいました。とにかく登場人物達が魅力的で、主人公リーファは勿論のこと、彼女に振り回される王達が愛しくて仕方ありません。彼らが繰り出す軽妙なやりとりに、バディ萌えまで刺激される始末ですv
 そして、生き生きと描かれているのは人物だけではないのです。街角の景色は勿論、辺りを渡る風のにおいさえも紡ぎだすのは、癖の無い、でも味のある文章。するすると頭の中に入り込んできて、読み始めたら止まらなくなること必至です。

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