あわいを往く者

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九十九の黎明 第五章 旅立ち

  
「だから、箒のでいい、って言ってたのに」
 大通りまで出てきたところで、ウネンは大きく溜め息をついた。最初に寄った「ヤンの店」に戻ろうと、通りの向こう側へと足を向ける。
「いや、箒は駄目だ」
 ウネンは、オーリの声が聞こえなかったふりをした。費用をかければ良いものが手に入ることなど、解りきったことなのだ。手の届かないものと知った上でそれに拘泥するなど、愚かな真似はしたくない。
 目的の路地へと角を曲がったウネンの前に、オーリが立ち塞がった。
「せめて、くわすきにすべきだ」
「そりゃあ鍬のは頑丈だけど、ぼくには太過ぎて持ちにくいし、重いし、加工しにくいし、何より高価たかい」
「高いと言っても、買えない値段ではないだろう」
「金額に価値が見合わないと思うものは、買えないよ」
「命の値段と思えばいい」
 射るようなオーリの眼差しに気づき、ウネンは知らず息を詰めた。
「……なんで、そんなにぼくの杖にこだわるの?」
 オーリが、ほんの刹那視線を外した。そうして再びウネンを見据え、訥々と、だが言って含めるように、言葉を吐き出していく。
「これから、お前は、自分で、自分の身を守らなければならない」
 その瞬間、ウネンは見えない手で頭をがつんと殴られたような気がした。
 パヴァルナにて、ヘレーを捜すにあたってモウルはウネンに「君がいてくれると助かるんだ」と言っていた。講談師から話を聞き出す際も、ウネンのことを「ヘレーさんの娘」だと持ち出していた。
 だからウネンは、彼らがヘレーを捜しに旅立つであろうことに不安を覚えつつも、心のどこかで期待していたのだ。二人が、一緒に行こう、とウネンに手を差し伸べてくれることを。
 ウネンが何をどこまで知っているのか確認するために。ヘレーの行方を捜すために。「ウネンを守る任」というのは、そういった理由で彼らがウネンの傍にいるための方便だった。ヘレーがラシュリーデンの王都へ向かったということが明らかになった今、もはや彼らがウネンとともに行動する必要は、どこにもない。それどころか、足手まといにしかならないウネンを連れていく義理など、彼らには微塵もないのだ……。
 ウネンが唇を噛んだ、その時、背後から甲高い声がウネンの名を呼んだ。
「こっちだ、ウネン! 早く!」
 びっくりして振り返れば、血相を変えたコニャが、大きな動作でウネンを手招きしている。
「あれ? コニャ? どうしたの?」
「どうしたの、じゃないよ! さっさと逃げなきゃ! そいつ、人攫いだろ!」
 ああー、と息を吐き出しながら、ウネンはオーリを見やった。
 いつもの仏頂面が、ほんの僅かしおれて見えた。
  
「ごめんなさい……。僕、そのぅ、護衛とか、そういうの考えたこともなかったから、つい……」
 申し訳なさそうに身を小さくさせるコニャに、オーリの溜め息が降りかかる。
「気にするな」
「本当にごめんなさい……」
 オーリが小さく頷いた。おそらく「もういいから」という意味だろうが、初対面のコニャには、「そのとおり、お前が悪い」と追い打ちをかけられているように見えているに違いない。ウネンは慌てて二人の間に割り込んだ。
「それより、コニャ、心配してくれてありがとう」
「あ、うん。どういたしまして」
 まだ少しオーリのことが気になっているようではあったが、コニャははにかんだ笑顔でウネンのほうを向いた。
「大通りでウネンを見かけて、声をかけようと思ったら、ええと、その、護衛さんがウネンを追いかけているのが見えたから、もうびっくりしちゃってさ」
「もしかして、仕事の途中だったんじゃ……」
「いいや。今日は掃除の仕事はもう終わり。今から、ユウ先生のところに字を教えてもらいに行くんだ」
「ユウ先生?」
 ウネンがおうむ返しに問い返せば、コニャがどこか誇らしげに胸を張る。
「炎の神の神庫ほくらの前にある代筆屋さんなんだけど、暇な時に読み書きを教えてくれるんだよ」
 と、「あっ、そうだ」と目を輝かせてコニャが身を乗り出してきた。
「ウネンもおいでよ。先生に紹介するよ! ウネンがお城の偉い人の助手をしてるって聞いたら、先生、絶対びっくりすると思うな!」
 すっかり調子を取り戻した様子で、コニャが悪戯っぽく笑う。
 ウネンは、思わずオーリと顔を見合わせた。
  
 コニャの熱心な誘いにもだが、何より自らの好奇心に負けて、ウネンはコニャの先生に会いに行くことにした。幸い、今回の外出についてハラバルは「日が暮れるまでには戻るように」とウネンに告げていた。この言葉に最大限に甘えるつもりで、ウネンはオーリとともにコニャの先導で大通りを進む。
 人通りの絶えない賑やかな街路、そこかしこから聞こえる物売りの口上。馬の足音、馬車の音。手押し車の軋む音に、「どいた、どいた」と人足の声。
 流れゆく人波に不意にきができたかと思えば、ぽっかりと開けた空間がウネン達を出迎えた。王都の主だった街路が一点に集まる場所、中央広場だ。
 二時の方角にあるレンガ造りの大きな建物が、炎の神の神庫ほくらに違いない。その堂々たる姿にウネンがしばし目を奪われていると、コニャが「こっちだよ」と手招きをした。
 神庫ほくらとは広場を挟んだ反対側に、目的地である代筆屋はあった。三階建ての家並に埋もれるようにして建つ、こぢんまりとした二階建ての、とても間口の狭い店だった。
 あけっ放しの扉の中へと、コニャが元気よく「こんにちはー!」と飛び込んでゆく。
 店に入ってすぐ正面には、奥へと続く扉が立ち塞がっていた。入り口を入った右手の、広場に面した窓の前に書き物机があり、褐色の髪の男が書物と紙の山の隙間から「いらっしゃい」と顔を上げる。
 店内の壁は全て棚で覆われており、製本師の手によると思われる書物が数冊見られるほかは、手作り感溢れる綴じ本が沢山並んでいた。本の合間には様々な大きさの箱が置かれ、あちこちに砕木紙の束や巻かれた羊皮紙が所狭しと突っ込まれている。
 左手の棚の前を見れば、丸椅子に座って鉄筆を握る、六、七歳ぐらいの子供が二人。兄弟なのだろう、互いにそっくりな顔に溢れんばかりの好奇心をたたえ、首を何度も上下させて突然の来客を見比べている。
 コニャが奥の扉の前に立ち、ウネンとオーリがそのあとに続けば、店の中は足の踏み場もない満員となった。
  
 お客さんが来たからちょっとの間外へ出ておくれ、と子供達に声をかける代筆屋を、「お客じゃないので」と押しとどめ、それなら自分も立たねば、とばかりに慌てて腰を浮かそうとするのを、「狭いんだから先生は座っといてよ」とコニャが座らせる。それでもまだ「いや、しかし」と恐縮する彼をなんとか落ち着かせて、そうして一同は自己紹介を交わした。
「へええ、王様の補佐官の助手を!」
 代筆屋のユウは、コニャの予言どおり、ウネンに対して藍色の眼をみはった。「家柄に関係なく取り立てられたということですか。それは、本当に、素晴らしい」と、何度も何度も頷いている。
「先生、それ、すごいの?」
 丸椅子に座る子供のうち、兄のほうが、目をきらきらと輝かせながら、ウネンとオーリが作る壁の隙間からユウに問いかけてきた。即座に弟が、「えらいの?」とあとに続く。
 コニャが、芝居がかった調子で両手を腰にあてて、得意げに胸を張った。
「カミルもカレルも馬っ鹿だなあ。凄いし偉いに決まってるだろ! こんなでっかい護衛が守ってくれるんだぞ」
「でっかい」
「でっかいな」
 くりくりとした青い瞳に相次いで見上げられ、オーリが困惑顔で僅かに顎を引く。
「文字だって、難しい計算だって、お手のものなんだぞ」
「お手のもの」
「おててのもの」
「だよね!」とウネンに同意を求めてから、コニャはユウを振り返った。
「ねえ、先生、僕も頑張って勉強したら、お城に住めるようになるかなあ」
「勉強したら必ず住めるかと言ったら、残念ながらそうとは限らないけれども、でもね、勉強しなかったら、何も変わらないんだよ」
 穏やかな、それでいて力強い声が、狭い部屋の空気を揺らす。
 小さな生徒達が揃って背筋せすじを伸ばしたのを見て、ウネンは思わず笑みをもらした。
  
 ウネンと同い年ぐらいの――つまり、ウネンよりも三、四歳年上に見える少女が、窓の外から「ユウ先生」とおそるおそる声をかけた。
「カミル、カレル、お迎えが来たよ」
 ユウに呼ばれるよりも早く、小さな兄弟は競うようにして蝋板を背後の棚に仕舞い、「ありがとうございました」「ました」と口々に礼を言った。我先にとウネンとオーリを押し分けて広場に飛び出して、最後は二人して声を揃えて「おねえちゃん!」と少女に体当たりをする。
「でっかい人、ばいばーい」
「ばいばーい」
 輝くような笑顔で手を振る二人と、その視線の先の「でっかい人」とを見比べて、少女が真っ青な顔で「失礼しましたっ」と謝った。そうして、二人の弟の手を引いて、逃げるように去っていく。
 オーリが、上げかけた右手をそっと下ろして再び室内に向き直った。いつになく鈍い動きで。
 ウネンは密かに溜め息を押し殺した。笑顔の一つでも見せれば人当りも多少は良くなるだろうに、と思いかけたものの、愛想のよいオーリを想像することができなくて、心の中で頭を抱える。
 ウネンの視線に気づいたか、オーリがついと眉を寄せた。
「どうした」
「……さっきの子達に、なんかすっごく気に入られてたね」
 そうだな、と相槌を打つ仏頂面の、口角が僅かに引き上げられる。つられてウネンが微笑んだ時、コニャが「あーあ」とぼやく声が聞こえた。
「カミルとカレルはいいよなあ、あんな優しい姉ちゃんがいてさ」
 振り返れば、先ほどまで奥の扉の前にしゃがんで書き取りの練習をしていたコニャが、兄弟が座っていた椅子に座り直すところだった。床に置いていたお手本をもう一つの丸椅子に載せ、そうして真剣な表情で再び鉄筆を動かし始める。
 ユウが、静かな声でウネン達に語りかけてきた。
「コニャは、六人兄弟の一番上のお兄ちゃんなんですよ」
「六人」
 ウネンとオーリの声がきれいに重なった。
「ずっと弟や妹達の面倒をみてきて、働けるようになったら家計を助けて、だから今まで読み書きを習う機会がなくってね」
 コニャを見つめるユウの眼差しは、本当に温かだった。
「ずっと口説いていたんですけど、最近になってやっとこうやって時々うちに来てくれるようになってね」
「だって、レオのやつがさ、去年王都にやってきたばっかのくせに、ちょっと文字が読めるからって、いつの間にか僕よりも沢山稼いでるんだもん」
 視線を蝋板からあげないまま、コニャが唇を尖らせる。
「それに、うちのおチビ達が押しかけてきたら、先生んち、足の踏み場がなくなっちゃうでしょ。だから、僕が先に勉強しておいて、おチビ達に教えてやるつもりなんだ」
「いい『お兄ちゃん』だなあ」
 ウネンがしみじみと呟くのを聞き、コニャが「えへへ」とはにかんだ。それから、「先生、書けたよ」とユウを呼ぶ。
 ユウが「失礼」と一言断って、コニャの傍へと席を立った。
「そういや、オーリもお兄ちゃんなんだよね」
 妹が一人いる、とのモウルの言葉を思い出して、ウネンはオーリを見上げた。
 オーリは、「ああ」と軽く頷いてから何か思案するように視線を宙に彷徨わせ、そうして何事も無かったかのように再びウネンを見た。
「モウルには、姉が一人いる」
「えっ、そうなんだ」
 驚くウネンに、オーリが怪訝そうに「意外か?」と問うた。
「あ、うん。なんとなくだけど、兄弟がいるような感じがあまりしなかったから……」
「年齢が十歳も離れているからな。それに、あいつが七歳の時に里を出てしまっている」
「里を?」
「あいつの姉というだけあって、好奇心の強い人だったからな。暖かい海で泳いでみたい、と言っていた」
「海で泳ぐためだけに? 流石はモウルのお姉さんだ」
 モウルの顔で想像しても全く違和感がないな、と思ってウネンは苦笑した。その際にはきっと傍らに、眉間に皺寄せ溜め息をつくオーリの姿があるに違いない。
「はい、良くできました。じゃあ、次にいこうか」
 ユウが、扉の脇の棚から新しい蝋板を取り出しコニャに手渡した。先ほどまでコニャが使っていた蝋板を手に、机に戻ってくる。
「見てくださいよ、ほら」と蝶番を広げられた二枚の板の左側には、幾つもの単語がまだたどたどしい筆致で書き取られ、そして右側の板には、羽を広げ今にも空へ飛び立ちそうな鴉の姿がえがかれていた。
「凄い、上手だ」
 ウネンが感嘆の声を上げる横で、オーリも感心したように唸り声を漏らす。
「ええ、本当に。上手でしょう」
 ユウが、我がことのように嬉しそうに微笑んだ。それから少しだけ眉を寄せて、「でも、文字の練習もしっかりやろうね」とコニャを見る。
 と、コニャの「はーい」というイイ返事をかき消すようにして、大きな鐘のが広場の向こうから聞こえてきた。
 ウネンがいつも城で聞いている音と比べて、驚くほど近い、まるで音自体が質量を持っているかのような圧倒的な存在感が、辺りの空気を震わせる。
「広場を挟んで向かい側が、炎の神の神庫ほくらなんですよ」
 自己紹介の際にウネンが、中央広場に来たのは初めてだ、と言っていたからだろう、ユウが説明を入れてくれた。
「七十年前、タジ国との戦を勝利に導いてくださった炎の神を讃えて建てられたんです。〈かたえ〉であるジェンガ様が王城にいらっしゃることから、町の者は『神庫ほくら』というよりも『礼拝堂』と呼んでいますけれども」
「天井画がね、すっごく綺麗なんだよ!」
 大人しく蝋板に文字を刻んでいたはずのコニャが、鉄筆を握りしめて身を乗り出してきた。
「こう、ぐわーっと炎が渦を巻いているところとか、天から神様が降りてくるところとか、見ているだけで胸がどきどきするんだ」
 うっとりとした表情でそこまで語って、それからコニャは「そうだ」と両手を打った。
「ウネンはまだ礼拝堂に行ったことがないんでしょ。僕が案内してあげるよ!」
「えっ?」
 突然の申し出にウネンが目をしばたたかせている間に、コニャはテキパキと蝋板から椅子までをきっちりと片付け、そうしてウネンの手をとった。
 ウネン同様まばたきを繰り返しながら、ユウがおずおずと問いかける。
「コニャ、字の練習は……?」
「今日はもう終わり! また明日ね、先生。じゃあ、ウネン、行こう!」
「え、あ、ちょっ」
 煙突掃除という身体を使う仕事をしているからだろうか、コニャは思いのほか力が強かった。ぐいぐいとコニャに引っ張られていくウネンのあとを、溜め息とともにオーリが追う。
「行ってらっしゃい」とのユウの声が、鐘の余韻と混じりあった。
  
  
 炎の神の神庫ほくらは、大小二つの平たい八角柱を積み重ねたような形をしていた。どっしりとした下層部には、窓が上下二段に規則正しく並んでいる。装飾一つ無い武骨な佇まいは、神のおわす場所というよりも、倉庫か砦かといった風情だ。
 だが、入り口をくぐった途端、世界は一変した。
 壁も柱も天井も、くまなく漆喰の化粧を施された明るい室内がウネン達を出迎えた。
 幾つもの円柱が建物の外周に沿うようにして立ち並び、神庫ほくらを、中心部分とその周囲をめぐる回廊とに切り分ける。窓と窓の間の壁面にも柱があり、全ての隣り合った柱は上部でアーチを成していた。そうやって形作られた穹窿きゅうりゅう天井に、窓から差し込む淡い陽光が絶妙な階調を作りだしている。ごつごつとした外観からは想像もつかない、滑らかで優美な造形だ。
 コニャに引かれて中心部分に足を踏み入れたウネンは、思わず感嘆の声を上げた。
 八角柱の箱が積まれているようにしか見えなかった上層部分の内側は、見事な丸天井となっていた。漆喰で丁寧に塗り固められた、一切のひずみも見られない曲面。その全面に、七十年前の護国の物語が、鮮やかな色彩でえがかれていた。
 天井の北半分では、耳あて帽に暗色のマントを身に纏った騎馬の軍が、甲冑を着込んだチェルナ軍に矢の雨を降らせている。大地に降臨する炎の神の姿を境にして、南側には、神の炎とともに反撃に転じるチェルナの軍勢。前線近くで杖を掲げる黒髪は、若き日のジェンガだろうか。
「僕が小さい頃にね、なんか有名らしい画家がやってきて、天井画を修復してくれたんだ」
 コニャの声が、静謐なる円蓋へと吸い込まれていく。
「まるで、魔法みたいだな、って思ったんだ。絵筆が触った部分から、人々が、世界が、息を吹き返していくんだもん」
 惚れ惚れとした眼差しをそうっと天井から引き戻し、それからコニャは、少しだけ照れ臭そうに笑った。
「実はね、煙突を掃除しおわったあとにさ、僕、煙突の内っ側の壁に煤で絵をくことにしてるんだ」
 そんなことをして大丈夫なのか。ウネンは少し心配になったものの、コニャの笑顔に水を差す気になれなくて、喉まで出かかった問いを呑み込みなおす。が。
「そんなことをしても大丈夫なのか?」
 ウネンの葛藤を、オーリが見事に蹴散らした。
「雨が降ったらすぐに消える位置を選んでるから、大丈夫だよ」
「そうか」
 オーリが小さく頷いた。
 コニャも、今度はオーリの頷きの意味を正しく受け止めることができたようだった。満面に笑みを浮かべて、得意げに胸を張る。
「僕の、秘密の天井画だよ」
 天井じゃないけど、と、自分で自分の言葉に付け足して、そうしてコニャは、悪戯っぽく片目をつぶってみせた。
「誰にも言わないでね。内緒だよ」
  
  
 仄かに赤みを増した空の下、ウネンとオーリはコニャと別れて帰途についた。
「あ……」
「どうした」
「杖の材料、買えなかったな……」
 ああ、と、抑揚のない相槌がオーリから返ってくる。
 ウネンは唇をきつく引き結んだ。口の中に溢れてきた苦いつばきを、やっとのことで嚥下する。
 家路につく人々で混み合う大通りを、二人は黙って歩き続けた。