あわいを往く者

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WEB小説リンク集

〈ローズ〉の末裔

CloudCollector'sVector (2CV)  
 田舎で植物を育てている変人のフィン。彼は送りつけられてくる設計図と材料を元に、とある機械を完成させた。
 その彼の元にやってきたのは設計図を送りつけてきた人物・アグリ。彼女は〈案内人〉であるフィンの相棒であり〈審判者〉の一人だった。
 そのアグリを追ってきたグスタフ。彼はある決意の元に行動していた。
 太陽を遮る〈ローズ〉の下、それぞれの「夜」があふれ出す。
(サイトの紹介文より)
 
 とにかく、冒頭の幻想的な風景に、ガツンと衝撃をくらいました。氷の大地、朱に染まる地平線、蒼黒い空に黒い雲、そして〈ローズ〉。ああ、これぞセンス・オブ・ワンダー!
 〈案内人〉とは、〈審判者〉とは何者か。読みやすい文章と息をつかせぬ展開に心を奪われ、一気に読み通してしまいました。夜の世界をゆく人々の生きざまに、思うさま胸の奥を揺さぶられます。

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BLANCA

0℃の夢  
囚われの身となった敵国の若き将軍と、彼の監視人にさせられた奴隷の少女。
雪女王の支配する国エディルフォーレで、言葉の通じぬふたりは鉄格子越しに互いの心をぎこちなくたどる。
(サイトの紹介文より)
 
 名前すら持たぬ奴隷の少女の、おのれの境遇を充二分に理解した抑揚のない語りに、心が鷲掴みにされました。淡々とした文章の端々から、身を切るような寒さと耐え切れぬほどの空腹感が滲み出てくるのがお見事です。
 お互いに言葉が通じないゆえに、口から漏れるそれは単なる「音」でしか過ぎません。訥訥と交わされる「音」の果て、ついにそれが意味を持つ瞬間、胸がいっぱいになりました。その後、の物語も読み応えたっぷりですv

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残心

  • 作者:へい 様
  • 掲載サイト:note
  • 備考:一部性描写・流血描写あり
 
顔も頭も運動神経も並以下な主人公が、並以外の騒動に巻き込まれる恋愛犯罪小説。(サイトの紹介文より)
 
 幾つものテーマを幾重にも織り込んだ、読めば読むほど味のある物語です。
 一番外側にあるのは、型破りで破天荒でパワフルな登場人物達が繰り広げる学園青春ドラマ。五校合同体育祭を企画実行しようと頑張る彼らの、痛快学園物語です。その内側には、「管内一のバカップル」と謂われる二人にまつわる恋愛物語。全編を通して語られるのはこの恋愛譚なのですが、その更に内部に、もっともっと重くて深い題材が内包されているのです。
「行った罪」と「行わなかった罪」。謝罪とは何か。許すことの意味は。散らばったパズルのピースを一つ一つ集めていくほどに、眼前に突きつけられる、人間のエゴ。
 行間を魅せる文章にも、すっかり惹きつけられました。

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はいいろの糸

かなたへ
  • 作者:水城夕 様
  • 掲載サイト:かなたへ
  • 備考:一部性描写あり
 
私の父が、人を殺した。
その日から、平穏だった私の人生は音を立てて崩れた。
父が殺した女性には、幼く美しい兄妹が残されていた……。
数年後私は教師となり、彼らは生徒となって再会してしまう。
見惚れるほどの美少年に成長した彼に、私は惹かれはじめる。
「この恋は許されない。私の父が彼の母を殺したのだから」
(サイトの紹介文より)
 
 綿密に組み上げられたストーリーの鮮やかさに、読み進めるほど、来し方を振り返らずにはおられません。とにかく一切の予断なく読んでほしい物語です。(そういう意味では、四章の終わりに作者さんが自ら記された注釈も、二周目の楽しみに取っておくのをオススメいたします……)
 それは、あまりにも美しく、完璧な、それでいて傷だらけな愛。一転、二転と、様相を変える物語に翻弄される快感をどうぞ。

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天空の彼方

天上の藍  
時は、米中戦争の最中。
日本の航空自衛隊が、命運をかけて打ち上げたミサイル防衛母艦、オデッセイ。
その若き女性指揮官、右京奏と、女性戦闘機パイロット獅堂藍。
右京、獅堂、二人の闘う女の恋愛を中心に送る、近未来恋愛ファンタジーです。
(サイトの紹介文より)
 
 近未来、突然変位のように現れたベクターと呼ばれる新生種と、現人類である在来種との間に生じた軋轢が、戦争という形で人々の目の前に噴出。個人と国家、更に種としてのそれぞれの思惑に翻弄され、迷いながらも、夢を、存在意義を求めて足掻く人々の姿から目が離せません。
 SF仕立てのバイオテクノロジーネタ(好物です)も、航空自衛隊や警察といった戦う組織のハードな描写(大好物です)も、読み応えたっぷりで、時間を忘れて物語を追ってしまいました。冷静に計算された物語の容赦のなさといったら、登場人物の置かれた理不尽な状況に、何度歯軋りし涙したことか。世界をまたにかけた、壮大なラブストーリーに大満足です。

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