あわいを往く者

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WEB小説リンク集

アイオライトの心臓

 
異常な痣とともに少年ロクドは生まれた。
左の指先から手首までを、深い深い暗闇の沼に浸したような、異常な痣──それは、彼の人生を決定づける、忌まわしい呪いの印だった。
呪いを解くため、そして再び家族とともに暮らすため、少年は旅に出る。
魔術師カレドアのもとで修行を積みながら手がかりを探すロクドだったが、ある静かな夜、街で奇妙な少女に出会い……。
大陸の北西に位置する架空の国家を舞台とした、呪いの謎を紐解く魔法と貴石の正統派ボーイミーツガール系ハイ・ファンタジー。
(サイトの紹介文より)
 
 故郷の地に埋められていた禍の種を一身に引き受けた少年ロクドと、あまり他人と深く関わろうとしない魔術師カレドアが、ひょんなことから結んだ師弟の縁。光纏う不思議な少女との邂逅を経て、そこにもう一組の魔術師師弟の軌跡が重なり、やがて呪いの謎は、五百年前に葬り去られた悲劇を炙り出す。
 瘴気の大平原、光の神の加護を受け何百年と回り続ける風車、ひたひたと近づいてくる恐るべき奇病、悲劇、そして破滅。物語そのものもとても好みですが、それを支える世界観にも興味を惹かれました。カレドアが魔術についてロクドに語る場面の、なんとわくわくすることか!
 それに加えて、登場人物達がまた魅力的で。師弟コンビのなんとなく血圧低めな関係は言わずもがな、例の魔術師の兄弟弟子コンビのバディっぷりにも心臓を射抜かれました。いやあ、いいわあ、むっちゃ好き。
 読み応えたっぷりの正統派ファンタジー、とても美味しかったです。

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王たちの機械

 
「脊柱」と呼ばれる塔があった。
そこでは数多くの機械が、それぞれの役割を持って動いている。
機械は「精神」を持たない。
それこそが「人間」と「機械」の圧倒的な差である。
人間は言う「脊柱には関わるな」と。

しかし今、ユウリとキリアは「脊柱」を目指す。
自らの記憶と意思のチカラで。
(サイトの紹介文より)
 
 一度は滅びかけた「人間」が再び甦りつつある世界、「機械」の領域に立つ「脊柱」という名の塔に挑む少年と少女の物語です。
「精神」を持ち得ないがゆえに「精神」を持つ人間に執着し、「精神」を奪い取る「機械」達。「精神」を奪われた「人間」は、不可解なちからで肌を剥ぎ取られて死んでゆく。そんな理不尽で恐ろしい敵でしかなかった「機械」ですが、謎が明かされてゆくにつれ、恐怖はその矛先を変え、容赦のない現実がじわじわと腹の底を冷やしてゆきます。
 精神とは、意思とは何なのか。何が人間を人間たらしめるのか。砂嵐の中にそびえ立つ、緩やかなS字を描いて天と地を繋ぐ塔、の映像がとにかく印象的で。センスオブワンダー、たっぷり堪能させていただきました!

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愛などない / 30度の傾斜角

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
真面目で厳格な女教師・一乃だったが、生徒会長・白倉の罠に嵌められ、翻弄される。白倉の思惑とは…?(サイトの紹介文より)
 
「愛などない」と「30度の傾斜角」。この二つは、二人の出会いにまつわる出来事を、それぞれの視点で描き出した、表裏一体の物語です。
 同シチュエーションを男女双方の視点で描く手法は、決して珍しいものではありません。語り手の視野を狭める事で、お互いの人物像にそれぞれ齟齬を生じさせ、「あの時コイツってばこんな事を思ってたんだ」的な意外性をもって、読者を引き込む技法です。
 ところが、この二作の場合、それぞれ主人公の目を通して物語が展開しているにもかかわらず、相手の心情が読み手にも充分伝わってくるのです。まず、これが凄い。どちらを読んでも、一乃さんは一乃さんであり、白倉氏は白倉氏なんです。お互いの表情も、そこから読み取る事の出来る感情の起伏も、二つの作品でブレる事はありません。
 なのに、「30度の傾斜角」を読んだ途端、世界の奥行きが一気に広がるのです。白倉氏の人物像にしても、過去について筆を割かれた文字数以上のものが、彼の背後から感じ取れるのです。とにかく、凄い。単純に双方向の視点で物語が二本分、ではなくて、もっともっと沢山の物語が相乗効果で生まれてくる、それが凄い。
 
 とにかく、予断無しで作品世界に浸っていただけたら。と、いつもにも増して抽象的な紹介文で失礼いたします。

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王都警備隊

Windy Hill  
中世欧州風(?)異世界ファンタジー。王都シエナを舞台にした、元盗人が主人公の似非ミステリ。脱走国王や胃痛病み側近などがレギュラー陣のシリーズ作品。(サイトの紹介文より)
 
「元気で威勢のいい女子」萌えとともに、戦う組織萌え、謎解き萌えのど真ん中を見事に射抜かれてしまいました。とにかく登場人物達が魅力的で、主人公リーファは勿論のこと、彼女に振り回される王達が愛しくて仕方ありません。彼らが繰り出す軽妙なやりとりに、バディ萌えまで刺激される始末ですv
 そして、生き生きと描かれているのは人物だけではないのです。街角の景色は勿論、辺りを渡る風のにおいさえも紡ぎだすのは、癖の無い、でも味のある文章。するすると頭の中に入り込んできて、読み始めたら止まらなくなること必至です。

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王室繁盛記

Romance in Farce
  • 作者:RIF 様
  • 掲載サイト:Romance in Farce R18
  • 備考:一部性描写あり
 
剣も魔法も出てこない仮想歴史恋愛小説 ……とサイトの説明文にもあるとおり、架空の世界を舞台にした、ファンタジーと言うよりもヒストリカル・ロマンスと言う方がしっくりくる雰囲気のシリーズ物です。
 
 コメディタッチな物語には、つい声を上げて笑いそうになり、シリアスな物語には、息を呑んで文字を追い続けてしまいました。
 抑制の効いた言葉の奥に垣間見える、物語や登場人物に対する深い愛が、より一層読み手をお話の世界へと引き込んでくれます。
 一筋縄ではいかない登場人物達の中でも、個人的にアンヌ姐さんが大好きです。「愛」と「陰謀」の同居具合が素敵過ぎますv

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朝焼色の悪魔

 
九州の地方都市で謎のホームレス集団死が発生、それに関わった少年が虫が炎に飛び込むように自ら命を絶った。彼らが死ぬ前に言った共通の言葉は「アカイ」。それは、ある男の野望の下に仕掛けられた、バイオテロの始まりであった・・・。(サイトの紹介文より)
 
 新種のウイルスによるバイオテロと、それに立ち向かう人々の物語です。
 題材が題材だけに残酷な場面も現れますが、タフで魅力的な登場人物達のお陰で夢中で読み進められました。凛々しくて強い由利子さんと、どこまでもイイヒトな葛西巡査のコンビがお気に入りです。
 シリアスな場面が続くかと思えば、時々、ニヤリ、とほくそ笑むようなネタが仕込まれてて、飽きさせてくれませんv

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