あわいを往く者

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WEB小説リンク集

白痴のダンテ

 
 西洋の文化が大量に流入し始めたばかりの極東の国。
 文化は好むが異国人はまだまだ珍しい。
 そんなご時世に、ある薄暗いライブハウスに奇妙な異国人ジャズバンドが現れる。
 音楽をたしなむ青年:伊達は彼らの音楽を聴いたあるトランペッターが狂死したことから、彼らの存在を知る。
 曰く、悪魔の音楽を奏でるものども――と。
(サイトの紹介文より)
 
 〈悪魔の音楽〉を奏でるというジャズバンド・オーリム。機会を得てオーリムの末席に加わることになった伊達は、並々ならぬ彼らの音楽への情熱にあてられながら、才能を開花させてゆく……のだが。
 時に激しく、時にひそやかに、端正に、狂おしく、恍惚と歓喜の声を上げる楽の音。ひたひたと足元に忍び寄る不穏な気配。「全ては音楽のために」との囁きとともに伊達に突きつけられた、恐るべき選択肢。バンドメンバーの過去を、オーリムの真実を知った伊達――ダンテ――が、おのれの道を見出し、真っ直ぐに進んでいく姿に胸が熱くなりました。
 物語そのものにも心が惹かれましたが、それと同じぐらい、文章にも心を揺り動かされました。まるで本当に音が聞こえてきそうな演奏の描写。音を読み手の脳内に呼び覚ますように描き出すばかりか、音楽に対する想いや思想をも含めた「音」の一切合財を、これでもか、と読み手に突きつけてくるがごとき文章は、鳥肌ものです。
 音楽家への、そしてあまねく表現者への、愛溢れる物語、ご馳走さまでした!

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はいいろの糸

かなたへ
  • 作者:水城夕 様
  • 掲載サイト:かなたへ
  • 備考:一部性描写あり
 
私の父が、人を殺した。
その日から、平穏だった私の人生は音を立てて崩れた。
父が殺した女性には、幼く美しい兄妹が残されていた……。
数年後私は教師となり、彼らは生徒となって再会してしまう。
見惚れるほどの美少年に成長した彼に、私は惹かれはじめる。
「この恋は許されない。私の父が彼の母を殺したのだから」
(サイトの紹介文より)
 
 綿密に組み上げられたストーリーの鮮やかさに、読み進めるほど、来し方を振り返らずにはおられません。とにかく一切の予断なく読んでほしい物語です。(そういう意味では、四章の終わりに作者さんが自ら記された注釈も、二周目の楽しみに取っておくのをオススメいたします……)
 それは、あまりにも美しく、完璧な、それでいて傷だらけな愛。一転、二転と、様相を変える物語に翻弄される快感をどうぞ。

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氷中花

LOVE NOTE  
女子高生と教師の三角関係モノ。三人称。シリアスじれじれ系。(一部R-18)
好きな人を忘れるために選んだのは凍えるような目をした喪服姿の行きずりの男。
入学式の日に思いがけず再会した二人は・・・。
(サイトの紹介文より)
 
 タイトルどおり、冴え冴えと身を切るような寒さの中、それでも懸命に咲こうとする花のような物語です。
 何も知らなかった行きずりの関係から、生徒と先生という禁断の枠組みの中に、そして更に思いもかけなかった複雑な運命のもとへと、放り込まれてしまう二人に、もどかしさとやりきれなさに身悶えしながら読み進めました。
 脳裏にまざまざと浮かび上がるラストシーンの美しさには、ただただ感無量です。

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華の誘惑

A-seat
  • 作者:文月 柊 様
  • 掲載サイト:A-seat R18
  • 備考:一部性描写あり
 
彼女を初めて見た時、自分のものにしたいと思わざるを得なかった。
十六歳の誕生日を迎える[優花]を、十年間待ち続けた[雅臣]。それが愛なのか、戯れなのか。気付くまでには、更に時間が必要だった
(サイトの紹介文より)
 
 流れるような文章が描き出す、美しくて、官能的で、それでいて眩暈がするほどに澄みきった空気が素敵です。
 十九歳も年下の優花ちゃんをこれでもかと翻弄する雅臣氏が、その実、逆に彼女に心乱されているさまが、たまりません。これぞ歳の差恋愛の醍醐味、と、一人にやにやしどおしでした。
 互いに寄り添ったかと思えば、また離れ、そうやって少しずつ心を重ねていく二人に、訪れる試練の数々。まるで映画を見ているかのようなドラマティックな展開に、何度も感嘆の溜め息が漏れました。

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フライディと私

P Is for Page  
雨風がしのげて、食料と水と話し相手兼召使まで用意された無人島に漂着したラッキーな私(ロビン)と、そこで出逢ったフライディの物語。(サイトの紹介文より)
 
 軍属という先輩遭難者の「フライディ」と、高校生の「ロビン」。運命的な出会いを経てバディとなった二人を描くシリーズの、一番最初の物語です。
 一人称という、表現に制約のある手法を使っているにもかかわらず、語り手を取り巻く周囲の気配さえも描き出す、その手腕。全編から漂う、翻訳小説のような雰囲気にも思いっきり酔いしれました。
 と、書き手としての野暮な視点はこれぐらいにしておいて。
 とにかく、勝気で何事にも真っ直ぐなロビンと、彼女に頭の上がらない(という状況を楽しんでさえいる)フライディのやり取りが楽しくて仕方ありません。シリーズを通して、読めば読むほど幸せな気分になれる素敵な物語ですv

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秘密の部屋

ddb
  • 作者:ゴロ 様
  • 掲載サイト:ddb R18
  • 備考:一部性描写あり
 
柚川沙織は16歳。両親に言われ、乗った車の
着いた先は、とても大きく立派な
日本家屋の屋敷だった――――
(サイトの紹介文より)
 
 迷いの無い細やかな文章が描き出す、秘密の、部屋。あれよあれよという間に、どっぷりと物語の中に引き込まれてしまいました。
 理不尽な状況に呑まれつつも、それに屈しない沙織の強さがとても格好良いです。勿論、その他の登場人物もとても魅力的で(まあ、一部例外な方はいらっしゃいますけど:笑)、それ故、それぞれが抱える悲しみや苦しみに、胸を打たれどおしでした。
 感動的で、でもしっかり官能的で、二度美味しいとはまさしくこの事かもしれません。とにかく、言葉責め最高。

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