あわいを往く者

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蝶を吐く

 
その世界では、蝶を吐くことは最高のエンターテイメント。舞台に立つパフォーマの吐き出した蝶に、今夜も観客達は魅了される。街一番のパフォーマであるオリエを、マネージャとして支えるジェラは、彼の吐き出す蝶の美しさに誰よりも憧れている。そんな彼らの前に現れたのは、新米パフォーマの女、カマラだった。友情と憧憬、愛情と嫉妬。最後に残る感情は――。
※こちらの作品は、犬井 作さん、室木 柴さん、やまめさんの主催する「蝶を吐く」企画に参加のため、執筆した作品です。
(サイトの紹介文より)
 
 カラフルでも歪だったり、単彩でも完璧な形だったり、それぞれの才能を、そして個性を見せつけるかのように、パフォーマー達は口から蝶を吐く。それがこの世界で最も人々にもてはやされるエンターテイメントなのだ。
 冒頭で披露される、街一番の腕前を持つオリエのパフォーマンス。彼のマネージャーであるジェラとともに幻想的なステージに心を奪われていたら、ほどなく、それまでの認識をダイナミックにひっくり返されました。一瞬にして再構築される、新たな世界の姿。蝶を吐く、という行為に託されたもの。独特の世界観にあっという間に呑み込まれました。
 オリエとジェラの夢を、友情、愛着、嫉妬といった様々な想いを乗せて宙を舞う色とりどりの蝶の、なんと美しいことか。我々の現実とは似て非なる世界で、我々と同様に悩み惑う彼らの姿から、目が離せません。

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EARTH FANG

The Spirit of the Mystic Valley  
新石器時代のシベリア。神霊を敬いながら暮らす〈森の民〉のもとへ、南から、太陽神を信仰する開拓者たちがやってきた。友好の使者として送られたマシゥと、狩人の青年ビーヴァの、友情と闘いの物語。
狩猟民族、シャーマニズム、シベリア諸民族の民話・神話を題材にしています。
(サイトの紹介文より)
 
 シベリア風の世界を舞台に、異なる文化・価値観を持つ二つの民族が出会い、衝突し、どうしようもない状況に陥りながらも、それでもより良き未来を求めて足掻く人々の物語です。
 森を敬い、森を構成する一員として大自然に寄り添うようにして生きる森の民に対して、比較的温暖な南方出身の、森を切り拓き大地を耕し、大自然をも征服しようとする開拓者達。王の使者として少し遅れて開拓団に合流したマシゥは、森の民の狩人ビーヴァと親交を結び、彼らの生きざまを理解してゆく……のです、が。
 丁寧な筆致が、人々の生活や文化、信仰をあますところなく描き出すと同時に、血なまぐさい民族間の対立を容赦なく眼前に突きつけてくれます。寒冷地の厳しくも豊かな森の景色も、まるで目に見えるよう。
 人と自然との関わりを描いた壮大なる叙事詩、堪能させていただきました。

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金枝を折りて

Windy Hill  
田舎村の少年シェイダールは神託により父を喪った。以来、神はいないと信じている。だがそんな彼が、新たな王の候補者に選ばれた。神の力を身に宿す王、その力を受け継ぐべき者として。
いもしない神に支配される国など変えて見せる――決意と共に王宮へ向かったシェイダールの前に、王殺しの儀式と太古のわざが立ちはだかる。
謎と秘密、絡み合う思惑の中を手探りで進む彼が目指すのはひとつ。
「もう誰も、神のために死ななくていい国を」
(サイトの紹介文より)
 
 神のちからを用いて政を執り行う王。その後継者は世襲に依らず、ちからの器たるべき資質によって決定される。類稀なる能力を見出され跡目候補の一人として選ばれたシェイダールは、神を信じないがゆえに初めのうちこそ反発するものの、人々の幸せのために、大切な人の命を守るために、いにしえの秘術の謎に立ち向かう。
 ともに苦難を乗り越え信頼を築く主従の他、登場人物達がとても魅力的で、各所で萌えツボを突かれまくりました! が、やはり特筆すべきは、色や音、《詞》を使う神秘の術、ウルヴェーユ(彩詠術)。読むほどに、見えるはずのない「ちから」がまざまざと脳裏に浮かび上がってくるようです。
 信仰と人智と、感情と理性と。物語を楽しみながらも、神秘のわざが炙り出す幾つもの命題を考えさせられずにはいられません。
 激動の果てに迎えたラストシーン、かつての彼らの姿が思い出され、目頭が熱くなりました。

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白痴のダンテ

 
 西洋の文化が大量に流入し始めたばかりの極東の国。
 文化は好むが異国人はまだまだ珍しい。
 そんなご時世に、ある薄暗いライブハウスに奇妙な異国人ジャズバンドが現れる。
 音楽をたしなむ青年:伊達は彼らの音楽を聴いたあるトランペッターが狂死したことから、彼らの存在を知る。
 曰く、悪魔の音楽を奏でるものども――と。
(サイトの紹介文より)
 
 〈悪魔の音楽〉を奏でるというジャズバンド・オーリム。機会を得てオーリムの末席に加わることになった伊達は、並々ならぬ彼らの音楽への情熱にあてられながら、才能を開花させてゆく……のだが。
 時に激しく、時にひそやかに、端正に、狂おしく、恍惚と歓喜の声を上げる楽の音。ひたひたと足元に忍び寄る不穏な気配。「全ては音楽のために」との囁きとともに伊達に突きつけられた、恐るべき選択肢。バンドメンバーの過去を、オーリムの真実を知った伊達――ダンテ――が、おのれの道を見出し、真っ直ぐに進んでいく姿に胸が熱くなりました。
 物語そのものにも心が惹かれましたが、それと同じぐらい、文章にも心を揺り動かされました。まるで本当に音が聞こえてきそうな演奏の描写。音を読み手の脳内に呼び覚ますように描き出すばかりか、音楽に対する想いや思想をも含めた「音」の一切合財を、これでもか、と読み手に突きつけてくるがごとき文章は、鳥肌ものです。
 音楽家への、そしてあまねく表現者への、愛溢れる物語、ご馳走さまでした!

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雑種の少女の物語

 
雨の夜、陵辱された少女は狂気に取り憑かれて街を去る。
精神の抜け殻となってさまよい歩いた少女は地下迷宮と化した古代都市へとたどり着き、狂人のまま魔物たちの姫君として祭り上げられていく。
(サイトの紹介文より)
 
 恐怖と絶望に蹂躙された少女は、狂気を供に魔の森へと迷い込む。
「語り部」の穏やかな語り口とは裏腹に、物語の始まりはあまりにも衝撃的です。控えめな描写にもかかわらず、なまじ文章が流麗なだけに、おぞましい出来事はするすると脳内に注ぎ込まれ、脳裏に結ばれる情景は目を背けてしまいたくなるほど。
 ですが、仄かな明かりがひとつ、ふたつ、と地下迷宮の中に灯り始めるにつれ、みるみるこの物語の虜となってしまいました。
 闇は光に、不幸は幸せに、恐怖は愛に。白虎や山羊頭といった魔物達が素敵でね。いわゆる冒険者として相対したらば、死ぬほど恐ろしい敵のはずなのに。人間と魔物、異なる二つの価値観のはざまで穏やかな日々を送る「雑種の少女」の可愛いこと。
 やがて運命の歯車が軋みながら回り、物語は容赦なく終焉を迎え、そうして気づくのです。誰もが――読者であるはずの自分さえもが――物語の登場人物となっていたことに。……うわー、やられた。気持ちよく、してやられた。ほんと最高。
 嗚呼、「雑種の少女」に幸あれ!

 この物語は、前にご紹介した図書館ドラゴンは火を吹かないの前身ともいえる作品だそうです。図書ドラが気に入った方は是非こちらの物語も読んでみてください。でもって、図書ドラ未読でこの物語が気に入った方には、全力で図書ドラをお勧めしますぞ。

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魔女の愛弟子

 
生まれる前から魔女になる契約を負った「わたし」は、13歳のある日、師匠トラメにもらい受けられる。強大なトラメ石の力を持つ師は「わたし」の魔女の資質を見抜き、黒曜石の力を授けた。無数の依頼の中から契約が成立する可能性のあるものを選びとり、師の元に運ぶのが「わたし」の仕事となる。
幾年もたったある日、師は唐突に妖しく輝くオパールの魔女に連れ去られる。そこにも抗えない契約があることに気づいた「わたし」は師を取り戻すための旅を始めた。
(サイトの紹介文より)
 
 師である西の大魔女を追って旅に出た、「愛弟子」ルンペルシュティルツヒェン、通称ペル。名に縛られ、役目に縛られ、一心に師を追い求めるばかりのペルが、色んな人々の「依頼」に触れるうちに、少しずつ人の想いを、そして自分の想いを知ってゆく。そのたどたどしい足取りを、応援せずにはいられません。
 旅の道連れとなった東の大魔女ゴルテンとの、どこか危なっかしいやりとりにも、目を引き付けられました。
 貴石のちからを持つ「魔女」、愛弟子の元に届けられる「依頼」、読み取られる運命の縮図、道を踏み外した「闇」、そして、「世界」の秘密。幻想的な物語に加えて、肌で感じるがごとき魔法の描写がたまりません。人々の生活感あふれる町々の様子も読み応えたっぷり。
 ウイスキーの薫り漂う、大人のための童話です。

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惑星ファルファーレ ―星の雨が降る海―

 
 地球から植民して七百年の時が過ぎた惑星ファルファーレ。そこには超常能力を持つ者たちがひっそりと暮らす島がある。
 ある日惑星を襲った災禍を機に、ファルファーレの社会は少しずつ変わり始めた。
 超能力を持つ集団を、それを持たない人々の社会は受け入れることができるのだろうか?
 それとも決裂しかないのか?
 惑星と島の命運をかけて社会と融和しようと苦闘する能力者の少年と、彼らを受け入れるべく力を尽くす若い海軍士官を中心にした群像劇。
(サイトの紹介文より)
 
 地球外惑星への移民、超能力者、そして冒頭から天地《あめつち》を揺るがす流星の災禍。実にSFらしい超現実的な世界を舞台に展開するのは、しっかりと地に足をつけた、人々の物語です。
 三百年に亘って、ちから持たざる者と隔絶して暮らしてきた孤島コラム・ソルの住民達の、独自の価値観や暮らしぶりにとても興味が惹かれました。同時に、そこから足を踏み出そうとする少年サッタールの姿にも。
 幾つもの思惑が入り乱れる中、サッタールに忍び寄る魔の手とは。対するアレックスを始めとする海軍の皆さんが格好よくってねえv 手に汗を握りながら、夢中になって読み通してしまいました。

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「デビィ&レイ」シリーズ

不思議な世界へ扉を開けて  
賞金首のヴァンパイア、レイと元人間のゾンビ、デビィはハンターに追われ、様々な町を転々としながら様々な事件に巻き込まれていく。ロード・ムービータッチの連作ホラー(一話読みきり)です。(サイトの紹介文より)
 
 とある理由でモンスター達が人間に紛れて存在する、パラレルワールド・アメリカ。異形のものどもに脅威を感じた人類社会は、モンスターを狩るハンターという存在を合法化した、んだけど、でもちょっと過剰防衛じゃないの、という世界で生き抜くモンスター達の物語。
 クールで見た目も美しく、文字通り超人的な能力をふるうレイですが、12歳まで人間として育てられたせいもあるのか、時々やたら人間臭い面が顔を出すのが素敵です。ギャップ萌え!
 対するデビィは、不幸な事件に巻き込まれるまではフツーに大学生をしていただけあって、基本はフツーの青年で、でも、ここぞという時にはタフさを発揮するナイスガイ。
 題材が題材ですので、ちょっと血が吹き出したり腕が飛んだり内臓がはみ出たりすることがありますが、アメリカドラマやバディものが好きな人にお勧めですv

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天空の彼方

天上の藍  
時は、米中戦争の最中。
日本の航空自衛隊が、命運をかけて打ち上げたミサイル防衛母艦、オデッセイ。
その若き女性指揮官、右京奏と、女性戦闘機パイロット獅堂藍。
右京、獅堂、二人の闘う女の恋愛を中心に送る、近未来恋愛ファンタジーです。
(サイトの紹介文より)
 
 近未来、突然変位のように現れたベクターと呼ばれる新生種と、現人類である在来種との間に生じた軋轢が、戦争という形で人々の目の前に噴出。個人と国家、更に種としてのそれぞれの思惑に翻弄され、迷いながらも、夢を、存在意義を求めて足掻く人々の姿から目が離せません。
 SF仕立てのバイオテクノロジーネタ(好物です)も、航空自衛隊や警察といった戦う組織のハードな描写(大好物です)も、読み応えたっぷりで、時間を忘れて物語を追ってしまいました。冷静に計算された物語の容赦のなさといったら、登場人物の置かれた理不尽な状況に、何度歯軋りし涙したことか。世界をまたにかけた、壮大なラブストーリーに大満足です。

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Cinnamon

IZAP
  • 作者:なかのうえ 様
  • 掲載サイト:IZAP R18
  • 備考:一部性描写・残酷描写あり
 
 人工生命体のティエに課せられた、新たなる実験。それは、少女にとってはあまりにも過酷なものであった。彼女の生みの親である遺伝学者ネルソンが、苦渋の果てに選んだ道は……。
 
 SF風味な異世界を舞台にした、不器用な研究者と健気な実験体の少女の物語です。運命に翻弄されるがままに、ゆっくりとその距離を詰める二人。その行く末で待つものを知った時の、あの衝撃は言葉に言い表せません。冷静に組み上げられた物語に完全に呑み込まれました。
 一部残酷な場面がありますが、それゆえに、いのちは光り輝くのです。後日談の『Coffee』もお忘れなく。

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輪廻の花

Cheerful!
  • 作者:日向そら 様
  • 掲載サイト:Cheerful! R18
  • 備考:一部性描写あり
 
突然目の前に現れた、式神多々羅。
「嫁に貰う約束だった」と言い張る多々羅に困惑する環。
前世と現世の因縁とは……?
(サイトの紹介文より)
 
 現代舞台の伝奇物です。大鏡神社の一人娘である高校生の環が、ふとした事で解いてしまった封印。現れた式神・多々羅とともに、彼女は破邪の剣を手に、心の弱い人間を蝕むという瘴気を祓う使命を背負う事になるのです。
 迷いながらも困難に真っ向から立ち向かう彼らのひたむきな眼差しと、軽妙な語り口が、重苦しくなりがちなテーマをどんどん読ませてくれます。
 絡み合った伏線が、すうっと一本にまとまっていくさまは、爽快の一言。
 個人的に、シリアスなシーンでも下心を忘れない多々羅が大好きですv

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