――詩歩理視点。
本日は晴天なりー。秋が深まるどころか、飛び越して冬のような皮膚に突き刺さるような寒さ。
なのに、お日様は元気満々らしく、晴れやかに輝いてらー。こういうのは洗濯物日和って言うのかな? まぁ、いいや。
そんなこんなで、中略。現在は午後〇時を回ったところ。 休日なので、ホストミスターかくし芸と元アナウンサーが出ている番組を元執事が作ったミートソースパスタを食べながら見ている。スープはオニオン。美味しいけど、熱いや。
あ、ここで初めて会う方がいらっしゃると思うので、自己紹介します。私の名前は唯賀詩歩理(ゆいがしほり)と言います。一応学生で、黒の黄昏の主人公のシキさんとは四つぐらい歳が離れてます。え、年齢をぼかすのかって? それは大人の事情です。
十八引く四はじゅうよ……って誰が口にするかー!!
「そういえば……これを飲んでいると昔を思い出すな」
ポツリと呟いたのは元執事のヴェルド・ラザフォード。彼は若々しいのですが、レイさんの七倍近く歳をくっています。職業魔法使い、でも世間からすればにー。
「……それ以上口にすると押し倒すぞ」
専業主夫です。ついでにここの同居人で、彼がやってきてからは事件が絶えません。多分、金○一少年とかコ○ン、左○と同じ性質の持ち主でどこに行っても事件に巻き込まれる。面白い反面、生命の危機におびえるのはもう嫌です。
「思い出すぐらいに印象的なことなの?」
「あぁ、あの若造はどうしているのか」
「? ヴェルドだって十分に若いと思うけど」
とある国。未だ、錬金術と魔術が発展途上であり、「科学」が認知されていなかった世界。
気まぐれに飛ばされてやってきた、全身黒づくめで紫色の瞳の男。
「男って言うのは俺のことなんだけどな」
「ナレーション中にセリフ!? なんかぶち壊しだよ!」
「ドンマイ、俺。そこで、腹が減ったんで近くの食堂に入った」
店の名物がオニオンスープで俺は選ぶのが面倒だったため、それとパンを注文した。のんびり読書をしながら待っていると、乱闘騒ぎが起きてな。
そこで暴れていたのが。
――ロイ先生視点。
「黒づくめの格好をした紫眼の男でした。どうやら注文したメニューの味が気に入らなかったそうで、店員の胸ぐらを掴んでいました」
「先生は、その男を止めに入ったのですか?」
「そうです。ですが、男は止めに入った人達に呪文をかけて吹き飛ばしたのです」
「へぇー、男も魔術師だったんだ」
「いいえ、あれは邪術師ですよ。素手でカウンターやテーブルを粉々していったので」
これ以上被害を拡大させぬように、男を外へと誘き出したのです。
しかし、男は柱を破壊しつくしその食堂は潰れてしまいました。幸い、けが人は一人も出なかったのですが。
周辺の住民は避難をし、人影はまったくありませんでした。これで男を止められる、そうして呪文を唱えました。
「周りは?」
「男が殆ど破壊していましたね。相手は呪文を唱えずに、魔術を使うのですから……苦戦を強いられました」
それでも、諦めずに術をかけ続けましたが男が急に腹部を抱えたので、その隙に……。
「空から石粒大量に降らせました。男はその場に倒れこんで、収まりがつきました」
「うぅわーひでー、そこまでしなくても良かったんじゃ」
「いいえ、その頃は完璧にしなければ気がすまなかったので。私もレイのように尖っていましたし」
――ヴェルド視点。
銀髪の男は爽やかそうに微笑んでくいっと銀縁フレームを上げた。
自慢げに話を進めて、腹立たしい、あぁ腹立たしい、腹立たしい。
「で、最後はどうなった?」
などと、邪気まみれのオーラを漂わせながら、あえて聞いてた。
「えぇ。私の呪文で復興しましたが」
この若造が。俺が背後に立っているのを知らずに、ほくそ笑みやがった。マジで許さん。
しかし、教え子らしき二人は俺の存在に気付いたのか、男は引きずった顔、女は指をさして口をパクパクさせている。
ははは。ここまで捏造されたら。
「ほほう、半世紀も生きておらず、ましては不老不死にもなっていないお前が、自慢げに捏造をするな。……Go to blazes(くたばれ)」
ちゅどーん!<効果音
「「ぎゃー!!」」
俺だって堪忍袋の尾がはち切れる。
――詩歩理視点。
いや、ここまで連れて来られて(傷はないけど)爆発に巻き込まれたわたしの身をあんじてくれよ。
ついでに、巻き込まれて床にうつ伏せになっている二人も痛々しいよぉ。 つーかさぁ、どっちも話していた内容が胡散臭い。結局暴れたのは二人じゃないの?
……結局のところ、決着がつくこともなくわたし達は元の世界に帰りました。その後の彼らの姿は目にしておりません。
<了>