あわいを往く者

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歩幅

  
  
  
   歩幅
  
  
  
「待ってよ」
 初めて彼女と一緒に帰った日、彼女はそう小さく口を尖らせた。
 のっぽ、とか、長い、とか言われる僕と比べるまでもなく、彼女はとても小柄で、少し油断するとすぐに歩調が合わなくなってしまうんだ。
 でも。
「遅いよ」
 二日目、今度は彼女は頬を膨らませて僕を振り返った。
 彼女を急かしてやいないか気にするあまり、少し歩速を抑え過ぎたみたいだった。
 しっかりしろ、と自分を叱咤して三日目、今日。
 眼鏡の隙間からこっそり彼女の歩幅を確認して歩いていると、彼女が大きな溜め息をついた。
 何かマズったか、と息を詰めた次の瞬間、僕の手に何かが触れた。
「……こうすれば、いいんじゃない?」
 少し照れたようなすまし顔が、僕を見上げている。
 暴れだした心臓の音がバレませんように、と天に祈りながら、僕は彼女の手をそっと握り返した。
  
  
  
〈 了 〉
 イラストサイト「ツェノンの背理」のオオアザさんが、「長身で眼鏡をかけた青年と赤毛で低身長の少女が手を繋いでいる場面」というお題で描いておられたイラストがあまりにも好みだったので、許可をいただいて、萌えを吐き出させていただきました。
 元ネタのイラストについては、オオアザさんのサイトの「イラスト」→「青年×少女ったー・まとめ#01」でご覧になれます。他にも素敵な絵が沢山並んでいますよーv