あわいを往く者

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黒の黄昏 第十二話 逆巻く神颪

  
  
  
    二  神柄
  
  
 冷気冴え渡る朝。
 シンガツェの町を見下ろす高台にある小さな祠、その前に横たわる巨石の上に胡坐をかいていた人物が、大きく伸びをした。身体の凝りをほぐすように二度三度と首をひねり、彼はもう一度背筋を伸ばして肩をまわして、背後に語りかけた。
「結局、そいつの目的は解らないままなのか」
「……はい。まさか見失うとは思ってもいませんでした……」
 サンは、滅多に見せない苦汁の表情で下唇を噛むと、申し訳なさそうにウルスの背中に向かって頭を垂れた。
 昨日、シキ達がシンガツェに着いた時には、既に町は宵闇に沈んでしまっていた。ルーは三人に丁寧に礼を言うと、目抜き通りである上り坂を静かに上がっていった。サンは残る二人にその場で待つように言って、何気ない様子を装いながら彼のあとをつけはじめた。
 だが、数十丈も進まないうちに、ルーの外套は往来の人波の中に溶け込むようにしてサンの視界から消え失せてしまったのだ。
「暗灰色の外套、金髪、藍の瞳。背丈はどのぐらいだ?」
「レイと同じぐらいでした」
「はん。剣以外に特徴と言えるほどのものはなし、か。一応アキには伝えておこう」
 アキとは、現在ウルス達が滞在している山小屋の所有者である。
「町長の息子さん、と聞きましたが」
「ああ」
 ウルスが、軽く頷いてからサンを振り返った。
「この町は古くから、彼らの言う『山神様』の信仰厚い町でな。そこの祠もその神を祀っているものらしい」
「……壊されて、いませんね」
「ああ。兄帝陛下の信仰改革も、山深い里には届かなかった……というよりも、ここの奴らがしたたかだったんだろうな。帝国の支配下になってすぐ、率先して改革に従うことを宣言し、帝国軍の邪教狩り部隊を退けることに成功したらしい。自分達で邪教をうち滅ぼす、と」
 そう言ってウルスは悪戯っ子のような表情を浮かべた。
「知っているか? 帝都への報告書によると、この祠は『納屋』らしいぞ」
「納屋、ですか」
 ……それは、かなり無理があるのでは。サンも思わず苦笑した。
「この辺りは、昔から古い信仰が生き残っている地域だからな。皆どうしても信仰改革には及び腰になる。その結果シンガツェは、州都ルドスよりも優位に立つことができた。そして、元来の町の自警団を警備隊として認めさせた。
 まあ、皇帝陛下の任命といっても、あくまでも手続き上の問題だ。実質は領主に決定権があるわけだからな。それに、元々シンガツェはルドス領主の領地ではなかったしな」
「と、いうことは……」
「そうだ。この町は、我々の敵ではない」
 そこまで語ってから、ウルスはまた町を見下ろした。
「だが、味方と言いきることもできないがな。アキを中心とした青年団の連中は、かなりアテにできるようだが……」
「それなら、昨日のあの男は……」
「ああ。目的は俺達ではない可能性が高い。シンガツェの内情を探る密偵といったところか」
 背後の木々が、ごう、と音を立てた瞬間、冷たい風が勢い良く彼らの横をすり抜けて麓へと吹き下りていった。
  
  
「ところで……随分疲れているみたいだが……かなりあてられたようだな」
 振り返りもせずに、ウルスがサンに問いかけてきた。だが、楽しげな声の調子に、その表情は嫌というほど窺い知ることができる。
「……そんなことは最初から解ってたでしょうに」
 深い溜め息を吐き出して、サンは肩を落とした。「俺もウルスさん達と一緒が良かったですよ。ホントに人が悪いんだから」
「仕方がないだろう? お子様には引率者が必要だからな」
「お子様って……」
 もはや苦笑しか漏らせないサンである。
「イの町というのは本当に平和なところだったんだな。あのボウズも粋がっているわりに、半年経ってやっと『使える』かどうかといったところだ。彼女については推して知るべしだろう? 二人とも術の腕前は良いのだろうがな」
「あー、まあ、警備隊が空き時間に牛を飼ってましたからね……」
「牛飼いか。そいつはいい」
 少し大袈裟に笑ってから、ウルスは今度は身体ごと振り返った。巨石から降りて、サンと真っ向から向き合う。
「サン」
 三白眼の鋭い瞳が、鉄錆色の前髪の下からサンを射た。思わずどぎまぎしながら、サンは静かに返答する。
「……はい」
「後悔しているのか」
「していません」
 その一瞬、ウルスの目がもの言いたげに細められた。サンはごくりと唾を呑み込んでから、改めて強固な意志を視線に込める。
「…………ならいい」
 囁くようにそう言うと、ウルスはサンの横を通り過ぎていった。
  
  
  
「風、を起こすんですか?」
 つい先刻まで、山小屋の中でみっちりとウルス達からこれまでの経緯を聞かされていたシキは、すっかり頭の中が飽和状態となってしまっていた。これ以上は何も考えることができない、と言わんばかりに、彼女はオウム返しで聞き返す。
「俺達は精霊使いじゃないぜ?」
 訝しそうな二人の声に、ザラシュが静かに頷いた。
『真実を教えてくれるって言ってましたよね』
 シキへの話が終わるのを待ってレイが発したその問いかけに、老師は、ふ、と優しい目で笑い返し、彼らを外へ、祠の裏手の木々の拓けた広場へといざなったのだ。
「そうだ。風を起こして、あそこの彼の帽子を飛ばすことができるかね?」
 ザラシュが指し示した方向には、レイの帽子をかぶったサンが立たされている。
「古代ルドス魔術には、そのような呪文は伝えられていない。さあ、どうするね?」
 シキは、軽く目を閉じて意識を集中させた。
 ――風を使う魔術……それらに共通する要素……。
 術の分析、分解は、丁度半年前に取り組み始めたところだった。抽出した要素の再構築については未知の領域だが、ある程度の見当はついている。
 ――確か、先生はこんなふうに…………
 軌道に乗り始めたシキの思考が、唐突に途絶えた。
 先生――ロイ・タヴァーネス。そして、その師匠であるザラシュ・ライアン。十五年前にロイの裏切りによって、表舞台を追われた、と彼は言った。
 ロイが誰かを師と仰いでいたということが、シキにはピンと来なかった。
 誰もが最初は未熟者だ。だが、どうしてもシキには、教えを乞うロイの姿を思いえがくことができなかった。いや、魔術の腕前以前に、自分よりも若いロイなど想像することができない。先生は、あくまでも「先生」なのだ。何があろうと。
 今でも目を閉じれば、楽しかったイの町での共同生活が瞼の裏に浮かび上がってくる。どうすれば、自分達はあのままの生活を続けることができたのだろうか。シキは悲しそうに溜め息をついた。
  
 胸に迫り来る、懐かしい光景の数々。
 時に優しく、時に厳しい先生。
 魔術のこととなると寝食を忘れて没頭し、些細な発見でも目を輝かせて私達に語り聞かせてくれる先生。
 子供は苦手だ、と言いつつ、正面きって生徒と対峙する不器用な先生。
 そして、そして…………
  
「じゃ、俺からいくぜ」
 レイの声が、一気にシキを現実に引き戻した。
 傍らで、不敵な表情を浮かべて腕を組むウルスの視線を意識しているのだろう、レイはぶっきらぼうにそう挙手してから、両手を身体の前で複雑に動かし始めた。
 レイは、いつも囁くように呪文を詠唱する。擦過音の目立つその声は、静かに、虫の声のように、辺りにじんわりと響き渡った。
 ――ああ、なるほど、あの術を応用したのか。でも……これだと、このままだと、きっと……。
 大きな風切り音は、シキの危惧したとおりだった。レイからサンに向かって、一直線に何かが虚空を駆け抜けていく。
「危ない! サン!」
 シキが叫ぶのとほぼ同時に、サンが少しだけ腰を落とした。その次の瞬間、彼がかぶっていた帽子は、小気味良い破裂音とともに、大きく宙を舞う。
  
 野鳥達が一斉に飛び立った。
 木々がざわめく。
 そして、静寂……。
  
  
「………………て。て、て、てっ、てっ」
「あー、悪い悪い。怪我はねぇか?」
「てっ、てめえ! 俺を殺す気か!」
「おっかしいなー。『風刃』じゃ危ないから、あそこをこうして、それから……」
 シキは、真剣な顔で首をひねるレイの傍まで寄ると、溜め息をつきながら彼の肩をとんとんと叩いた。
「もっと、力を分散させて範囲を広げないと。それに、威力削るの忘れてたでしょ」
「…………そうしたつもりだったんだよ」
 憮然とした表情で、レイが口を尖らせる。
 辺りに響く唸り声のようなものが、ややあって押し殺した笑い声に変わった。そして、遂にウルスが大声で笑い出した。
「何がおかしいんだよ」
「はっ! 友人の首ごと帽子を飛ばそうというのか。ご大層なものだな!」
 レイは、ウルスのほうをキッと睨んでから、サンのもとへと慌てて駆け寄っていった。
「ウルスさーん、笑い事じゃないですよ……」
 半分ベソをかきながら、サンが帽子を拾って立ち上がる。耳当て帽の前面からいただき部分の表革が、何かに強く擦られたようにささくれ立ってしまっていた。
「大丈夫か、サン」
「大丈夫? どこが!? 俺が寸前でよけたから、だからこれだけで済んだんだぞ!」
「よけたって言っても、少し掠ったろ? どうだ? 帽子は無事だな?」
「無事!? レイ、お前、帽子ってのは頭にかぶるんだぜ?」
 まさしく怒髪天を衝く形相で、サンがレイに詰め寄る。
「ちょっとお前、頭貸せ。帽子かぶらせて棍棒でぶっ叩いてやる。それで、帽子は無事だ、良かった良かった、って言ってやろうか」
 大きく息を吐いたのち、レイは神妙な顔で両手を上げた。
「悪かった。こんなつもりじゃなかったんだ。よけてくれて助かった。……それに、」ちら、とウルスのほうを見やってから、「ちょっとムキになっていた、と思う。本当に悪かった」
「もう、良いかね」
 レイの謝罪の言葉に頷きながら、ようやくザラシュが口を開いた。一同の視線が自分に集まったところで、言葉を継ぐ。「さて、次はシキの番だな。サン、どうするかね?」
 びくっ、と一瞬身体を震わせて、サンがおずおずと問い返す。
「…………え……っと、また、ですか……?」
「今度は俺がまとになる」
 サンの手から奪い取った帽子を、レイは自分の頭にかぶせた。
 何か言いかけたものの、ほどなくサンは肩で息をつくと、そのままウルスの傍へと向かった。
「ご苦労だったな」
「ええ、もう、こんな苦労はご免です」
 疲れ果てた声に、ウルスが軽く鼻で笑う。それからシキのほうを向いて鷹揚に腕を組んだ。
「さて、腕前を拝見しようか」
 山颪が枯れ葉を吹きさらっていく。シキは、深呼吸をすると、静かにレイのほうに向き直った。
  
 大丈夫。
 さっきのレイの施術のお陰で、問題点ははっきりした。
 既存の術の応用などではなく、初めて試みる術の組み換え。
 たぶん、できる。
 何を試されているのかは解らないけれど、その期待には応えられるはず。
 シキは、身体の前に両手を差し出すと、慎重にその指を動かし始めた。一音一音、注意深く、言葉を紡ぎ出す。
  
 麓に向かって宙を舞う枯れ葉達が、不意にその動きを止めて、大きく逆巻いた。
 そのまま枯れ葉を巻き込んで、一陣の風がレイのほうに向かって真っ直ぐ吹きつける。
  
 レイの黒髪が大きくたなびいた。
 土埃に目をつむったレイの後方、大きく弧を描いて帽子が地面に落ちた。
  
「やった!」
 思った以上の結果に、シキは思わず拳を振り上げていた。
「ほぉ!」
 ザラシュが感嘆の声を上げる。「お見事。これはロイに教わったのかね?」
「いえ。術の分解は少し習っていましたが、そのあとはまだ……」
「そうか。……なるほど、あれが君に固執する理由が解ったよ」
 ザラシュにそう言われて、シキはつい息を呑んだ。目の端に捉えたレイの表情が、僅かに曇る。シキは極力動揺を表に出さないように、抑揚を殺した声で老師に問うた。
「……それで、これは一体どういう試験だったのですか?」
 だが、その問いには答えずに、ザラシュは黙って印を組み始めた。シキも、レイも、見たことのない形の印を。
 彼の紡ぎ出す言葉は、シキ達の知るどの呪文とも違っていた。朗々と響き渡る低い旋律は、唄のように、皆の耳を優しくくすぐって大気中に拡散していく。
  
 その兆候は、微かに訪れた。
 それまで間断なく山頂から吹き下りていた風が、ふと、止んだ。
 不気味なほどの静寂の中、やがて、ザラシュの足元の枯れ葉がゆっくりと浮かび上がる。赤や茶色の葉がザラシュの身体の周りを取り囲み、そのまま静かに動き出した。
 枯れ葉が、いや、風が、彼の周りを回り始める。
  
 ザラシュが、もう一度何かを呟いた。だが、その声は風の音にかき消されてしまって、シキ達の耳には届かない。
 勢い良く渦を巻いていた風は、ザラシュから一直線にレイへと枯れ葉を撒き散らしながら進んでいく。
「うわっ」
 咄嗟に両腕で顔を防護したレイの手から、帽子がもぎ取られた。
 木立を抜けるほどの高みへと帽子は運ばれ、それからゆっくりと落ちてくる……ザラシュの手元へと。
  
「…………すごい」
 シキは唾を飲み込んだ。まるで自分の手足かのように風を操った老師の術に、彼女はすっかり魅せられてしまっていた。
 レイもまた、度肝を抜かれた様子だった。二の句がつげず立ち尽くすシキの傍に来ると、頬を紅潮させたまま、語りかける。
「精霊使いの技……じゃ、ねーよな?」
「違うと思う。あの呪文は、古代ルドス語だった」
 精霊使いとは、精霊と契約を結び、それを使役する技の持ち主のことをいう。ただ、その時にヒトの言語が使われることはない。もっと観念的な、いわゆる「うた」と呼ばれるもので彼らは精霊と言葉を交わすのだ。
「そうだな、概念としては、精霊使いの術に近いかもしれん」
 ザラシュがそう言って、帽子をレイに手渡した。
「古代ルドス王国以前、魔術といえばそれは全ての神聖魔術のことを指し示した。アシアスだけではない、もっと沢山の神々に人々は祈りを捧げ、その祝福を受けて暮らしていたのだ。
 そもそも、精霊使いの技と神聖魔術は根が同じだ。現象を司る神に祈って加護を受けるか、物質に宿る精霊に頼んで効果を得るか、ただそれだけの違いなのだ。解るかね?」
 二人は躊躇いがちに頷いた。
「それって、例えば、風を起こすのに、風の神様が存在するとして……」
「風の神に祈るか、大気の精霊に頼むか、……って感じなのか?」
「そのとおり。流石飲み込みが早いな。ロイは良い教師だったようだな」
 破顔するザラシュをよそに、二人は複雑そうな表情で顔を見合わせた。
 再会して以来二人は、この半年間の空白について、特に自分達の師匠について、話題にすることを努めて避けていたのだ。
 だが、所詮、それは無理のあることだった。二人の人生の半分以上は、ロイとともにあった。学校に通い、家の仕事を為し、魔術を習得する、その全てはロイのもとで、彼の指導を受けてのことだった。そう、二人はロイによって育て上げられた。ロイに言及せずには、彼ら二人の生い立ちは語れないのだ。
 普段でも、夜の睦言でも、油断をするまでもなく二人の会話はたちまち禁忌に突き当たった。不自然に途切れた話題を誤魔化せば誤魔化すほど、その言葉の裏にあるものをお互いに読み取ろうとしている二人がいた。隠すほどに、意識される存在。それはまるで遅効性の毒のように、じわじわと二人の胸を痛ませつつあった。夜ごと二人は、夢中でお互いを貪りあったが、それは既に愛を交わすための行為ではなく、不安を紛らわせるための行為でしかなかった……。
 ――だからといって、全てを曝け出すなんてことは、絶対にできない。
 シキは強く唇を噛んだ。レイが死んだと思い込んでいたとはいえ、一度は師とともに生きることを誓ったことを、彼に知られるわけにはいかない。
  
 だから、埋めてしまうしかないのだ。師の存在とともに、自分の犯した過ちを全て。
 たとえどんなに齟齬が生じようとも。
  
 悲壮な面持ちのシキに気づくことなく、ザラシュの講義は続く。
「そういう意味では、古代ルドス魔術は実に特殊なのだ。さきの例で言えば、精霊や神の意向を無視して、直接的に空気を動かそうというのが、古代ルドス魔術に他ならない。
 古代ルドス王国最後の王が記したとされる魔術書は、そのような、神を介しない『裏』の技だった。それをどのようにして王が知ったのかは、大きな謎だ。なんにせよ、その結果神々への信仰は薄れ、必要不可欠であったアシアスの治癒魔術以外の神聖魔術は姿を消した」
「すると、この間、雪を降らせたのは……」
 レイが身を乗り出す。
「そうだ。私が東風こちを祈ったのだ。風を昇らせ、雲を寄せ、雪を降らせたのだ」
「どうやって?」
「レイ、君は、フォール神聖魔術の書物を読んだことがあったと言ったな? そして、シキ。君は癒やし手の技……アシアス神聖魔術も幾つか習得しているそうじゃないか。それらと、古代ルドス魔術の呪文との根本的な違いを見つけるのだ。ならば、答えは解らずとも、それへの道筋は見つけることができよう」
「……って、教えてくれないんですか?」
 露骨に残念そうな表情で、レイが肩を落とす。
「まずは、道を見つけることだ。全ては、それからだ」
 頭を抱える孫弟子二人を残して、ザラシュはきびすを返した。山小屋へと、ウルスの傍を通り過ぎる。
「楽しそうだな、ご老体」
「ああ。こればかりは、幾つになっても血が騒ぐな……」
「そういうものなのか」
 ウルスは不思議そうにシキ達を振り返った。
「剣を書物に、腕力を知能に置き換えての、打ち合いだ。楽しくないわけがなかろう」
「なるほど」
 不適な笑みを浮かべて、ウルスが腕組みをした。「ならば、あの大魔術師を育て上げた腕前、しかと見届けさせていただくとするか」
 挑戦的なウルスの声を聞き、ザラシュはどこか嬉しそうに小さく微笑んだ。
  
  
「根本的な違い……か……」
 これまで慣れ親しんだ魔術。初めて出会う、その新たな視点に、レイは激しく興奮していた。深く腕を組み、思考をめぐらせる。
 そんな彼の傍らで、シキは昏い瞳でじっと地面を見つめて佇んでいた。