- 作者:呉ノ 朱人 様
- 掲載サイト:呉ノ朱 R18
- 備考:一部性描写あり
君が好きでした、とてもとても。
けれどもう、忘れてしまおう。
冒頭のこの一文を読んだだけで、見事に心を持って行かれました。
若名千鶴がふとしたはずみで学校の下駄箱で見つけた紙片に記されていた、恋文。僅か数文字のその文章が、彼女と、彼女を取り巻く人々との関係を、静かに静かに変化させていきます。
恋に恋する年代の、どこか夢見がちで、そのくせ妙に現実的な複雑な気配を、しっとりとした筆致が見事に描き出しています。何よりも特筆すべきは、その恐るべき構成力! 読み進めるほどに、鳥肌が立つ思いに襲われました。