あわいを往く者

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タグ別 » 学園

残心

  • 作者:へい 様
  • 掲載サイト:note
  • 備考:一部性描写・流血描写あり
 
顔も頭も運動神経も並以下な主人公が、並以外の騒動に巻き込まれる恋愛犯罪小説。(サイトの紹介文より)
 
 幾つものテーマを幾重にも織り込んだ、読めば読むほど味のある物語です。
 一番外側にあるのは、型破りで破天荒でパワフルな登場人物達が繰り広げる学園青春ドラマ。五校合同体育祭を企画実行しようと頑張る彼らの、痛快学園物語です。その内側には、「管内一のバカップル」と謂われる二人にまつわる恋愛物語。全編を通して語られるのはこの恋愛譚なのですが、その更に内部に、もっともっと重くて深い題材が内包されているのです。
「行った罪」と「行わなかった罪」。謝罪とは何か。許すことの意味は。散らばったパズルのピースを一つ一つ集めていくほどに、眼前に突きつけられる、人間のエゴ。
 行間を魅せる文章にも、すっかり惹きつけられました。

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はいいろの糸

かなたへ
  • 作者:水城夕 様
  • 掲載サイト:かなたへ
  • 備考:一部性描写あり
 
私の父が、人を殺した。
その日から、平穏だった私の人生は音を立てて崩れた。
父が殺した女性には、幼く美しい兄妹が残されていた……。
数年後私は教師となり、彼らは生徒となって再会してしまう。
見惚れるほどの美少年に成長した彼に、私は惹かれはじめる。
「この恋は許されない。私の父が彼の母を殺したのだから」
(サイトの紹介文より)
 
 綿密に組み上げられたストーリーの鮮やかさに、読み進めるほど、来し方を振り返らずにはおられません。とにかく一切の予断なく読んでほしい物語です。(そういう意味では、四章の終わりに作者さんが自ら記された注釈も、二周目の楽しみに取っておくのをオススメいたします……)
 それは、あまりにも美しく、完璧な、それでいて傷だらけな愛。一転、二転と、様相を変える物語に翻弄される快感をどうぞ。

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氷中花

LOVE NOTE  
女子高生と教師の三角関係モノ。三人称。シリアスじれじれ系。(一部R-18)
好きな人を忘れるために選んだのは凍えるような目をした喪服姿の行きずりの男。
入学式の日に思いがけず再会した二人は・・・。
(サイトの紹介文より)
 
 タイトルどおり、冴え冴えと身を切るような寒さの中、それでも懸命に咲こうとする花のような物語です。
 何も知らなかった行きずりの関係から、生徒と先生という禁断の枠組みの中に、そして更に思いもかけなかった複雑な運命のもとへと、放り込まれてしまう二人に、もどかしさとやりきれなさに身悶えしながら読み進めました。
 脳裏にまざまざと浮かび上がるラストシーンの美しさには、ただただ感無量です。

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和菓子さま 剣士さま

日々楽々  
高三でようやく青春することができた慶子さんと
和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。
季節の和菓子も出てきます。
(サイトの紹介文より)
 
 部活に進路に悩む高校生の日常を描く、青春群像です。丁寧でしっとりとした語り口が、まさしく上品な和菓子のようで、もう、いくらでもおかわりしたくなります。
 特筆すべきは、穏やかでおっとりとした慶子さんの、最強天然ぶりです。嫌味も無ければ、わざとらしくもない、読み進めるほどに、慶子さんが慶子さんである事に深く頷き、そしてホロリとさせられてしまう。そんな彼女の目を通して見た世界の、なんと愛しい事か。
 全編を通じて慶子さん視点の情景にもかかわらず、他の登場人物の心情が読み手にきっちり伝わってくるのが、また素晴らしくて。彼女ならではの独白も合わせて、隅々まで楽しませていただきました。

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愛などない / 30度の傾斜角

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
真面目で厳格な女教師・一乃だったが、生徒会長・白倉の罠に嵌められ、翻弄される。白倉の思惑とは…?(サイトの紹介文より)
 
「愛などない」と「30度の傾斜角」。この二つは、二人の出会いにまつわる出来事を、それぞれの視点で描き出した、表裏一体の物語です。
 同シチュエーションを男女双方の視点で描く手法は、決して珍しいものではありません。語り手の視野を狭める事で、お互いの人物像にそれぞれ齟齬を生じさせ、「あの時コイツってばこんな事を思ってたんだ」的な意外性をもって、読者を引き込む技法です。
 ところが、この二作の場合、それぞれ主人公の目を通して物語が展開しているにもかかわらず、相手の心情が読み手にも充分伝わってくるのです。まず、これが凄い。どちらを読んでも、一乃さんは一乃さんであり、白倉氏は白倉氏なんです。お互いの表情も、そこから読み取る事の出来る感情の起伏も、二つの作品でブレる事はありません。
 なのに、「30度の傾斜角」を読んだ途端、世界の奥行きが一気に広がるのです。白倉氏の人物像にしても、過去について筆を割かれた文字数以上のものが、彼の背後から感じ取れるのです。とにかく、凄い。単純に双方向の視点で物語が二本分、ではなくて、もっともっと沢山の物語が相乗効果で生まれてくる、それが凄い。
 
 とにかく、予断無しで作品世界に浸っていただけたら。と、いつもにも増して抽象的な紹介文で失礼いたします。

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忘れてしまおう

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
君が好きでした、とてもとても。
けれどもう、忘れてしまおう。

 
 冒頭のこの一文を読んだだけで、見事に心を持って行かれました。
 若名千鶴がふとしたはずみで学校の下駄箱で見つけた紙片に記されていた、恋文。僅か数文字のその文章が、彼女と、彼女を取り巻く人々との関係を、静かに静かに変化させていきます。
 恋に恋する年代の、どこか夢見がちで、そのくせ妙に現実的な複雑な気配を、しっとりとした筆致が見事に描き出しています。何よりも特筆すべきは、その恐るべき構成力! 読み進めるほどに、鳥肌が立つ思いに襲われました。

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夕庭

snail-paced
  • 作者:佐藤ひろ 様
  • 掲載サイト:snail-paced
     (2012/12/31閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写あり
 
 彼女が密かに恋焦がれる彼は、幼馴染の少女を想い続けていた。
 彼が惹かれた彼女は、彼の親友でもある幼馴染を慕い続けていた。
 報われない想いを抱える二人の軌跡が、ふとした事で重なり、やがてそれは彼ら四人の関係を静かに変化させていく……。
 
 自分が切望して手に入れられなかったものを、全て持っている(と思われる)人間に対する羨望、そして嫉妬。自分自身を痛めつけてもなお抑え切れなかった感情が、昇華した瞬間の、目も覚めるばかりの夕焼けの美しさに胸を打たれました。
 四者四様の繊細なる心の動きを見事に描き出す筆力には、脱帽です。

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