あわいを往く者

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愛などない / 30度の傾斜角

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
真面目で厳格な女教師・一乃だったが、生徒会長・白倉の罠に嵌められ、翻弄される。白倉の思惑とは…?(サイトの紹介文より)
 
「愛などない」と「30度の傾斜角」。この二つは、二人の出会いにまつわる出来事を、それぞれの視点で描き出した、表裏一体の物語です。
 同シチュエーションを男女双方の視点で描く手法は、決して珍しいものではありません。語り手の視野を狭める事で、お互いの人物像にそれぞれ齟齬を生じさせ、「あの時コイツってばこんな事を思ってたんだ」的な意外性をもって、読者を引き込む技法です。
 ところが、この二作の場合、それぞれ主人公の目を通して物語が展開しているにもかかわらず、相手の心情が読み手にも充分伝わってくるのです。まず、これが凄い。どちらを読んでも、一乃さんは一乃さんであり、白倉氏は白倉氏なんです。お互いの表情も、そこから読み取る事の出来る感情の起伏も、二つの作品でブレる事はありません。
 なのに、「30度の傾斜角」を読んだ途端、世界の奥行きが一気に広がるのです。白倉氏の人物像にしても、過去について筆を割かれた文字数以上のものが、彼の背後から感じ取れるのです。とにかく、凄い。単純に双方向の視点で物語が二本分、ではなくて、もっともっと沢山の物語が相乗効果で生まれてくる、それが凄い。
 
 とにかく、予断無しで作品世界に浸っていただけたら。と、いつもにも増して抽象的な紹介文で失礼いたします。

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Cinnamon

IZAP
  • 作者:なかのうえ 様
  • 掲載サイト:IZAP R18
  • 備考:一部性描写・残酷描写あり
 
 人工生命体のティエに課せられた、新たなる実験。それは、少女にとってはあまりにも過酷なものであった。彼女の生みの親である遺伝学者ネルソンが、苦渋の果てに選んだ道は……。
 
 SF風味な異世界を舞台にした、不器用な研究者と健気な実験体の少女の物語です。運命に翻弄されるがままに、ゆっくりとその距離を詰める二人。その行く末で待つものを知った時の、あの衝撃は言葉に言い表せません。冷静に組み上げられた物語に完全に呑み込まれました。
 一部残酷な場面がありますが、それゆえに、いのちは光り輝くのです。後日談の『Coffee』もお忘れなく。

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忘れてしまおう

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
君が好きでした、とてもとても。
けれどもう、忘れてしまおう。

 
 冒頭のこの一文を読んだだけで、見事に心を持って行かれました。
 若名千鶴がふとしたはずみで学校の下駄箱で見つけた紙片に記されていた、恋文。僅か数文字のその文章が、彼女と、彼女を取り巻く人々との関係を、静かに静かに変化させていきます。
 恋に恋する年代の、どこか夢見がちで、そのくせ妙に現実的な複雑な気配を、しっとりとした筆致が見事に描き出しています。何よりも特筆すべきは、その恐るべき構成力! 読み進めるほどに、鳥肌が立つ思いに襲われました。

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輪廻の花

Cheerful!
  • 作者:日向そら 様
  • 掲載サイト:Cheerful! R18
  • 備考:一部性描写あり
 
突然目の前に現れた、式神多々羅。
「嫁に貰う約束だった」と言い張る多々羅に困惑する環。
前世と現世の因縁とは……?
(サイトの紹介文より)
 
 現代舞台の伝奇物です。大鏡神社の一人娘である高校生の環が、ふとした事で解いてしまった封印。現れた式神・多々羅とともに、彼女は破邪の剣を手に、心の弱い人間を蝕むという瘴気を祓う使命を背負う事になるのです。
 迷いながらも困難に真っ向から立ち向かう彼らのひたむきな眼差しと、軽妙な語り口が、重苦しくなりがちなテーマをどんどん読ませてくれます。
 絡み合った伏線が、すうっと一本にまとまっていくさまは、爽快の一言。
 個人的に、シリアスなシーンでも下心を忘れない多々羅が大好きですv

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夕庭

snail-paced
  • 作者:佐藤ひろ 様
  • 掲載サイト:snail-paced
     (2012/12/31閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写あり
 
 彼女が密かに恋焦がれる彼は、幼馴染の少女を想い続けていた。
 彼が惹かれた彼女は、彼の親友でもある幼馴染を慕い続けていた。
 報われない想いを抱える二人の軌跡が、ふとした事で重なり、やがてそれは彼ら四人の関係を静かに変化させていく……。
 
 自分が切望して手に入れられなかったものを、全て持っている(と思われる)人間に対する羨望、そして嫉妬。自分自身を痛めつけてもなお抑え切れなかった感情が、昇華した瞬間の、目も覚めるばかりの夕焼けの美しさに胸を打たれました。
 四者四様の繊細なる心の動きを見事に描き出す筆力には、脱帽です。

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フライディと私

P Is for Page  
雨風がしのげて、食料と水と話し相手兼召使まで用意された無人島に漂着したラッキーな私(ロビン)と、そこで出逢ったフライディの物語。(サイトの紹介文より)
 
 軍属という先輩遭難者の「フライディ」と、高校生の「ロビン」。運命的な出会いを経てバディとなった二人を描くシリーズの、一番最初の物語です。
 一人称という、表現に制約のある手法を使っているにもかかわらず、語り手を取り巻く周囲の気配さえも描き出す、その手腕。全編から漂う、翻訳小説のような雰囲気にも思いっきり酔いしれました。
 と、書き手としての野暮な視点はこれぐらいにしておいて。
 とにかく、勝気で何事にも真っ直ぐなロビンと、彼女に頭の上がらない(という状況を楽しんでさえいる)フライディのやり取りが楽しくて仕方ありません。シリーズを通して、読めば読むほど幸せな気分になれる素敵な物語ですv

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秘密の部屋

ddb
  • 作者:ゴロ 様
  • 掲載サイト:ddb R18
  • 備考:一部性描写あり
 
柚川沙織は16歳。両親に言われ、乗った車の
着いた先は、とても大きく立派な
日本家屋の屋敷だった――――
(サイトの紹介文より)
 
 迷いの無い細やかな文章が描き出す、秘密の、部屋。あれよあれよという間に、どっぷりと物語の中に引き込まれてしまいました。
 理不尽な状況に呑まれつつも、それに屈しない沙織の強さがとても格好良いです。勿論、その他の登場人物もとても魅力的で(まあ、一部例外な方はいらっしゃいますけど:笑)、それ故、それぞれが抱える悲しみや苦しみに、胸を打たれどおしでした。
 感動的で、でもしっかり官能的で、二度美味しいとはまさしくこの事かもしれません。とにかく、言葉責め最高。

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Dr.高辻シリーズ

M2L -Meet to Love-
  • 作者:pea 様
  • 掲載サイト:M2L -Meet to Love-
     (2011/5/31閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写あり
 
美形歯科医師高辻朗(あきら) vs 天然系OL大森みゆきのラヴでコミカルな日常。(サイトの紹介文より)
 
 一見紳士に見えるDr.の、腹黒……じゃなくて明晰な様子や、ひねくれ……じゃなくてクールな態度に、翻弄されるみゆきさんが可愛らし過ぎますv
 Dr.の溢れんばかりの愛情と下心を、明るく軽くさらりと描き出す一方で、ここぞというところで濃厚な筆致が堪りません。
 時に甘く、時にほろ苦く、口当たりは抜群。軽妙でありながら堅実に綴られた物語が、ストライクど真ん中です。

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ギャラクシー・シリーズ

ABOUNDING GRACE  
航宙管制官をしているユナにふりかかる災厄とは
火星定期貨物シップの船長、性格の悪い俺様男のミカミだった。
宇宙に生きる男と、それを支える女性のスペース・ロマンス。
(サイトの紹介文より)
 
 時は23世紀、漸く火星への入植が軌道に乗り始めた時代の物語です。SF要素とロマンス要素の絶妙なバランスの元、魅力溢れる登場人物達がこれでもか、と物語を盛り上げてくれます。
 主人公の二人は勿論、キャプテン・ミカミの指揮する一癖も二癖もある部下達の存在感といったら、話を読み進めるほどに彼らが本当にどこかに生きているんじゃないか、と錯覚してしまいそうになるぐらいです。生命の危険と隣り合わせに宇宙を渡る彼らの格好良さたるや……!
 ニヤニヤ、ワクワク、ハラハラ、ドキドキ、させられた挙句に、クライマックスでは本気で泣いてしまいました。全編に散りばめられた諸々を、最後にぐぐぐっと纏め上げる手腕は、素晴らしいの一言です。

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籠女

emergence - R18恋愛小説  
ある日パソコンに送られてきた一通のメール。仕組まれた罠に気付かずそのメールを開いた瞬間、それは二人の男に弄ばれる陵辱の日々の始まりだった。(サイトの紹介文より)
 
 センセーショナルな紹介文にちゃっかりしっかりノせられて、軽い気持ちで読み始めた私ですが、ほどなく目が画面から離せなくなりました。ハードな展開は目次で警告されたとおり、それはそれで大満足(*^^*)なのですが、同時に登場人物達の心の動きが、半端ない説得力をもって読み手を物語に引きずり込んでいくのです。
 臨場感溢れる文章が描き出すカタルシス。そうして訪れる救済。読み終わった時には、しばし感動を噛み締めてしまいました。
 
 
 この話の登場人物達を下敷きにした「翠の王国」というファンタジーバージョンも、サイトで連載中です。こちらは一転して穏やかな雰囲気の、でも切なさ溢れる物語となっていますv

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王室繁盛記

Romance in Farce
  • 作者:RIF 様
  • 掲載サイト:Romance in Farce R18
  • 備考:一部性描写あり
 
剣も魔法も出てこない仮想歴史恋愛小説 ……とサイトの説明文にもあるとおり、架空の世界を舞台にした、ファンタジーと言うよりもヒストリカル・ロマンスと言う方がしっくりくる雰囲気のシリーズ物です。
 
 コメディタッチな物語には、つい声を上げて笑いそうになり、シリアスな物語には、息を呑んで文字を追い続けてしまいました。
 抑制の効いた言葉の奥に垣間見える、物語や登場人物に対する深い愛が、より一層読み手をお話の世界へと引き込んでくれます。
 一筋縄ではいかない登場人物達の中でも、個人的にアンヌ姐さんが大好きです。「愛」と「陰謀」の同居具合が素敵過ぎますv

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