あわいを往く者

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WEB小説リンク集

金枝を折りて

Windy Hill  
田舎村の少年シェイダールは神託により父を喪った。以来、神はいないと信じている。だがそんな彼が、新たな王の候補者に選ばれた。神の力を身に宿す王、その力を受け継ぐべき者として。
いもしない神に支配される国など変えて見せる――決意と共に王宮へ向かったシェイダールの前に、王殺しの儀式と太古のわざが立ちはだかる。
謎と秘密、絡み合う思惑の中を手探りで進む彼が目指すのはひとつ。
「もう誰も、神のために死ななくていい国を」
(サイトの紹介文より)
 
 神のちからを用いて政を執り行う王。その後継者は世襲に依らず、ちからの器たるべき資質によって決定される。類稀なる能力を見出され跡目候補の一人として選ばれたシェイダールは、神を信じないがゆえに初めのうちこそ反発するものの、人々の幸せのために、大切な人の命を守るために、いにしえの秘術の謎に立ち向かう。
 ともに苦難を乗り越え信頼を築く主従の他、登場人物達がとても魅力的で、各所で萌えツボを突かれまくりました! が、やはり特筆すべきは、色や音、《詞》を使う神秘の術、ウルヴェーユ(彩詠術)。読むほどに、見えるはずのない「ちから」がまざまざと脳裏に浮かび上がってくるようです。
 信仰と人智と、感情と理性と。物語を楽しみながらも、神秘のわざが炙り出す幾つもの命題を考えさせられずにはいられません。
 激動の果てに迎えたラストシーン、かつての彼らの姿が思い出され、目頭が熱くなりました。

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響空の言祝 きょうくうのことほぎ

コトカゼ  
歌によって命あるものを癒す歌鳥の民の少女・ハフリは、内気な性格と音痴ゆえの劣等感に苛まれ日々を過ごしていた。そんなハフリの前に現れたのは、翼持つ金色の獣を従えた少年・ソラト。導かれるように彼の手を取り、ハフリは草原の彼方へと旅立つが……。(サイトの紹介文より)
 
 一族のアイデンティティとも言うべき歌が上手くうたえず、自分の居場所を見つけられずにいたハフリ。自由闊達に見えて、その実、天候不順から村を救うという使命に縛られたソラト。そんな二人が、惑い、傷つきながらも、おのれに依って立つに至る物語です。
 文化や自然の描写が鮮やかで、旅行記をめくっているような心地になったり、主人公やその友人達の悩み多き様子に、青春小説を読んでいるような気持ちになったり、……そして、怒濤のクライマックスにはファンタジー心もガツンと揺さぶられました。
 小説という文字媒体を目で追っているにもかかわらず、読んでいて聴覚を刺激されるような気がしてならなかったという、不思議。歌鳥の民の癒やしの歌は勿論、風の音や笛の音など、「音」が強く心に残った物語でした。

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交叉軌道

エメラルド☆ファンタジア  
兄と俺とハルの人生が交叉する。甘苦くて切ない恋物語。(サイトの紹介文より)
 
 優秀で完璧な兄・優と、兄を追うことを諦めた主人公の良、良の元同級生である兄嫁ハル、の三人が織りなす、切なくて、痛くて、でもどこか優しい物語です。
 成績優秀で運動万能に加えて容姿端麗な人気者、という、歩くカリスマな兄に対する良の複雑な感情が、読んでいて胸に迫ってきます。
 物語も魅力的ですが、それを綴る文章がまた私の好みど真ん中で。「兄が放つ光と引力は、容赦なくハルの軌道を撓(たわ)めた。」とか、たまりませんv タイトルをはじめとして、天体にまつわる比喩表現が多く使われているのですが、それが情景や心情にしっくりと馴染んでいるのが心地よくて、読みはじめたら最後まで一気読みでした。

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風花~かざはな~

kuishinboの屋根裏部屋  
ゆき乃は祖母の亡くなった後山の上のお屋敷に下働きとして引き取られた。屋根裏部屋に住む少女は精一杯自分のつとめを果たそうと健気に働く。館の一人息子恭祐を思い、そして…(サイトの紹介文より)
 
 セピアシリーズという名のとおり、古い写真の中の風景のような、今はもう遠い時代を舞台に描かれるラブロマンスです。
 身分差を乗り越えてゆっくりと近づいてゆく二人に襲い掛かる、数奇にして過酷な運命に、何度も息を呑み、胸を締めつけられる思いに苛まれました。名家に渦巻く狂おしいほどの愛情と憎悪に翻弄されながらも、おのれの信じる道を選んだ二人の姿が、とても美しいです。

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コレクター

金曜日は雨がいい  
孤高の怪盗・山猫が残した「コレクション」に因縁アリな男三人。駆け出し盗人のマット、やり手画廊オーナーにして人畜有害な危険物ブルース、裏街道の便利屋フランキー。不本意ながらタッグを組む羽目になった三人が「山猫コレクション」を追う果てに見るものは。(サイトの紹介文より)
 
 直球一本勝負のマットと、慇懃無礼を時々通り越してしまうブルース、無愛想だけどカッコイイ(ファンの欲目)フランキーの、テンポの良い会話と情景豊かな文章が、まるでドラマを見ているかのような気持ちにさせてくれます。
 スリルと冒険の影に覗く、切ない、時に心温まる人間模様。でも、まるっと総括しようとすると、何故かお互いに悪態をつきながら右往左往している三人の姿が浮かび上がってくるという……。とにかく、個性的でタフな三人組がとてもお気に入りなのでしたv

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ギャラクシー・シリーズ

ABOUNDING GRACE  
航宙管制官をしているユナにふりかかる災厄とは
火星定期貨物シップの船長、性格の悪い俺様男のミカミだった。
宇宙に生きる男と、それを支える女性のスペース・ロマンス。
(サイトの紹介文より)
 
 時は23世紀、漸く火星への入植が軌道に乗り始めた時代の物語です。SF要素とロマンス要素の絶妙なバランスの元、魅力溢れる登場人物達がこれでもか、と物語を盛り上げてくれます。
 主人公の二人は勿論、キャプテン・ミカミの指揮する一癖も二癖もある部下達の存在感といったら、話を読み進めるほどに彼らが本当にどこかに生きているんじゃないか、と錯覚してしまいそうになるぐらいです。生命の危険と隣り合わせに宇宙を渡る彼らの格好良さたるや……!
 ニヤニヤ、ワクワク、ハラハラ、ドキドキ、させられた挙句に、クライマックスでは本気で泣いてしまいました。全編に散りばめられた諸々を、最後にぐぐぐっと纏め上げる手腕は、素晴らしいの一言です。

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籠女

emergence - R18恋愛小説  
ある日パソコンに送られてきた一通のメール。仕組まれた罠に気付かずそのメールを開いた瞬間、それは二人の男に弄ばれる陵辱の日々の始まりだった。(サイトの紹介文より)
 
 センセーショナルな紹介文にちゃっかりしっかりノせられて、軽い気持ちで読み始めた私ですが、ほどなく目が画面から離せなくなりました。ハードな展開は目次で警告されたとおり、それはそれで大満足(*^^*)なのですが、同時に登場人物達の心の動きが、半端ない説得力をもって読み手を物語に引きずり込んでいくのです。
 臨場感溢れる文章が描き出すカタルシス。そうして訪れる救済。読み終わった時には、しばし感動を噛み締めてしまいました。
 
 
 この話の登場人物達を下敷きにした「翠の王国」というファンタジーバージョンも、サイトで連載中です。こちらは一転して穏やかな雰囲気の、でも切なさ溢れる物語となっていますv

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