あわいを往く者

 [?]

WEB小説リンク集

50音別 » か行 » き

金枝を折りて

Windy Hill  
田舎村の少年シェイダールは神託により父を喪った。以来、神はいないと信じている。だがそんな彼が、新たな王の候補者に選ばれた。神の力を身に宿す王、その力を受け継ぐべき者として。
いもしない神に支配される国など変えて見せる――決意と共に王宮へ向かったシェイダールの前に、王殺しの儀式と太古のわざが立ちはだかる。
謎と秘密、絡み合う思惑の中を手探りで進む彼が目指すのはひとつ。
「もう誰も、神のために死ななくていい国を」
(サイトの紹介文より)
 
 神のちからを用いて政を執り行う王。その後継者は世襲に依らず、ちからの器たるべき資質によって決定される。類稀なる能力を見出され跡目候補の一人として選ばれたシェイダールは、神を信じないがゆえに初めのうちこそ反発するものの、人々の幸せのために、大切な人の命を守るために、いにしえの秘術の謎に立ち向かう。
 ともに苦難を乗り越え信頼を築く主従の他、登場人物達がとても魅力的で、各所で萌えツボを突かれまくりました! が、やはり特筆すべきは、色や音、《詞》を使う神秘の術、ウルヴェーユ(彩詠術)。読むほどに、見えるはずのない「ちから」がまざまざと脳裏に浮かび上がってくるようです。
 信仰と人智と、感情と理性と。物語を楽しみながらも、神秘のわざが炙り出す幾つもの命題を考えさせられずにはいられません。
 激動の果てに迎えたラストシーン、かつての彼らの姿が思い出され、目頭が熱くなりました。

タグ:               


響空の言祝 きょうくうのことほぎ

コトカゼ  
歌によって命あるものを癒す歌鳥の民の少女・ハフリは、内気な性格と音痴ゆえの劣等感に苛まれ日々を過ごしていた。そんなハフリの前に現れたのは、翼持つ金色の獣を従えた少年・ソラト。導かれるように彼の手を取り、ハフリは草原の彼方へと旅立つが……。(サイトの紹介文より)
 
 一族のアイデンティティとも言うべき歌が上手くうたえず、自分の居場所を見つけられずにいたハフリ。自由闊達に見えて、その実、天候不順から村を救うという使命に縛られたソラト。そんな二人が、惑い、傷つきながらも、おのれに依って立つに至る物語です。
 文化や自然の描写が鮮やかで、旅行記をめくっているような心地になったり、主人公やその友人達の悩み多き様子に、青春小説を読んでいるような気持ちになったり、……そして、怒濤のクライマックスにはファンタジー心もガツンと揺さぶられました。
 小説という文字媒体を目で追っているにもかかわらず、読んでいて聴覚を刺激されるような気がしてならなかったという、不思議。歌鳥の民の癒やしの歌は勿論、風の音や笛の音など、「音」が強く心に残った物語でした。

タグ:       


ギャラクシー・シリーズ

ABOUNDING GRACE  
航宙管制官をしているユナにふりかかる災厄とは
火星定期貨物シップの船長、性格の悪い俺様男のミカミだった。
宇宙に生きる男と、それを支える女性のスペース・ロマンス。
(サイトの紹介文より)
 
 時は23世紀、漸く火星への入植が軌道に乗り始めた時代の物語です。SF要素とロマンス要素の絶妙なバランスの元、魅力溢れる登場人物達がこれでもか、と物語を盛り上げてくれます。
 主人公の二人は勿論、キャプテン・ミカミの指揮する一癖も二癖もある部下達の存在感といったら、話を読み進めるほどに彼らが本当にどこかに生きているんじゃないか、と錯覚してしまいそうになるぐらいです。生命の危険と隣り合わせに宇宙を渡る彼らの格好良さたるや……!
 ニヤニヤ、ワクワク、ハラハラ、ドキドキ、させられた挙句に、クライマックスでは本気で泣いてしまいました。全編に散りばめられた諸々を、最後にぐぐぐっと纏め上げる手腕は、素晴らしいの一言です。

タグ: