あわいを往く者

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タグ別 » 現代

交叉軌道

エメラルド☆ファンタジア  
兄と俺とハルの人生が交叉する。甘苦くて切ない恋物語。(サイトの紹介文より)
 
 優秀で完璧な兄・優と、兄を追うことを諦めた主人公の良、良の元同級生である兄嫁ハル、の三人が織りなす、切なくて、痛くて、でもどこか優しい物語です。
 成績優秀で運動万能に加えて容姿端麗な人気者、という、歩くカリスマな兄に対する良の複雑な感情が、読んでいて胸に迫ってきます。
 物語も魅力的ですが、それを綴る文章がまた私の好みど真ん中で。「兄が放つ光と引力は、容赦なくハルの軌道を撓(たわ)めた。」とか、たまりませんv タイトルをはじめとして、天体にまつわる比喩表現が多く使われているのですが、それが情景や心情にしっくりと馴染んでいるのが心地よくて、読みはじめたら最後まで一気読みでした。

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「デビィ&レイ」シリーズ

不思議な世界へ扉を開けて  
賞金首のヴァンパイア、レイと元人間のゾンビ、デビィはハンターに追われ、様々な町を転々としながら様々な事件に巻き込まれていく。ロード・ムービータッチの連作ホラー(一話読みきり)です。(サイトの紹介文より)
 
 とある理由でモンスター達が人間に紛れて存在する、パラレルワールド・アメリカ。異形のものどもに脅威を感じた人類社会は、モンスターを狩るハンターという存在を合法化した、んだけど、でもちょっと過剰防衛じゃないの、という世界で生き抜くモンスター達の物語。
 クールで見た目も美しく、文字通り超人的な能力をふるうレイですが、12歳まで人間として育てられたせいもあるのか、時々やたら人間臭い面が顔を出すのが素敵です。ギャップ萌え!
 対するデビィは、不幸な事件に巻き込まれるまではフツーに大学生をしていただけあって、基本はフツーの青年で、でも、ここぞという時にはタフさを発揮するナイスガイ。
 題材が題材ですので、ちょっと血が吹き出したり腕が飛んだり内臓がはみ出たりすることがありますが、アメリカドラマやバディものが好きな人にお勧めですv

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21時のサウナルーム

憧憬アンプ  
――ひとッ風呂、浴びて帰りたい気分だった。(サイトの紹介文より)
 
 彼女にフられ、傷心を癒やすべくスーパー銭湯にやってきた「俺」を待ち受けていたのは、「サウナの神様」だった……。
 その場に居合わせた五人の男達の目の前で、なし崩し的に切って落とされる、戦いの火蓋。暑苦しくも熱き勝負の行方や如何に。端々に遊び心の効いた軽やかな筆致に、するすると読み進めていくうちに、気がつけば感動の渦に呑み込まれてしまっていました! まさか、サウナで汗を流す全裸の野郎の姿に、涙することになろうとは……。
 楽しく読んで、ほろりとして、あとがきまで美味しくいただきました。ご馳走さまでした。

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六條院の娘たち

 
本人の意向そっちのけで、年頃になると父の野心の道具となって、父が決めた『家』に嫁がされる娘たち。とはいえ、父の言いなりにはなっても大人しくわが身の不幸に甘んじているようなしおらしい性格をしている娘はひとりもいなかった。
結婚は父の都合、幸せになるのは自分の勝手♪ 産みの母親と性格の違う娘たちのそれぞれの恋模様。
(サイトの紹介文より)
 
 舞台は、1970年代の日本。「成り上がりの大金持ち」六条家の娘達に持ちかけられる、家同士の縁組の中で、自らの幸せを模索する彼女達の物語……なんて、通り一遍の説明では、このシリーズの魅力は語りきれません。
 我が身に降りかかる困難を、その芯の強さで乗り越えていく六条家のお嬢さん達が素敵なのは勿論のことですが、何より、彼女達の父親、六条源一郎という存在が、とてもいい味を出しているんです。彼の行き過ぎた親馬鹿が引き起こす騒動が、この物語の要だと言っても過言ではありません。
 焦れ焦れしたりほのぼのしたりする恋物語の間に差し挟まれる、企業経営にまつわる話もとっても面白いですv

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ライジング!

Arlequin
  • 作者:御堂志生 様
  • 掲載サイト:Arlequin R18
 
「富士には女神がいる」山岳警察には10年前からそんな噂があった。
女神の名は沖眞理子、階級は警部、富士山岳警備隊の隊長である。だが、彼女に纏わる噂は様々で、むしろ悪い噂のほうが多い。
表に立ちたがらない隊長に代わり、対外的な役目を果たす副隊長の南一之警部補。
問題を起こし富士に転属になったばかりの水原 健巡査部長。
総勢11名の隊員と、彼らを取り巻く人々のお話。
(サイトの紹介文より)
 
 架空の山岳警察を題材とした物語です。「本作は“なんちゃってレスキュー物語”です」との但し書きがありますが、現実には無いものを描く、ということこそが小説の醍醐味ではないでしょうか。個々の描写もその積み重ね方もとてもしっかりとしていて、安心して物語を楽しむことができました。
 緊迫したレスキューシーンは勿論、きめ細かな人間ドラマも読み応えたっぷり。そして、強くてカッコイイ沖隊長! 素敵! ピンと背筋を伸ばした生きざまとか、マジ惚れる。
 富士山は何度か登ったことがありますが、今度行く時には、彼らのことを色々妄想してしまいそうですv

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残心

  • 作者:へい 様
  • 掲載サイト:note
  • 備考:一部性描写・流血描写あり
 
顔も頭も運動神経も並以下な主人公が、並以外の騒動に巻き込まれる恋愛犯罪小説。(サイトの紹介文より)
 
 幾つものテーマを幾重にも織り込んだ、読めば読むほど味のある物語です。
 一番外側にあるのは、型破りで破天荒でパワフルな登場人物達が繰り広げる学園青春ドラマ。五校合同体育祭を企画実行しようと頑張る彼らの、痛快学園物語です。その内側には、「管内一のバカップル」と謂われる二人にまつわる恋愛物語。全編を通して語られるのはこの恋愛譚なのですが、その更に内部に、もっともっと重くて深い題材が内包されているのです。
「行った罪」と「行わなかった罪」。謝罪とは何か。許すことの意味は。散らばったパズルのピースを一つ一つ集めていくほどに、眼前に突きつけられる、人間のエゴ。
 行間を魅せる文章にも、すっかり惹きつけられました。

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はいいろの糸

かなたへ
  • 作者:水城夕 様
  • 掲載サイト:かなたへ
  • 備考:一部性描写あり
 
私の父が、人を殺した。
その日から、平穏だった私の人生は音を立てて崩れた。
父が殺した女性には、幼く美しい兄妹が残されていた……。
数年後私は教師となり、彼らは生徒となって再会してしまう。
見惚れるほどの美少年に成長した彼に、私は惹かれはじめる。
「この恋は許されない。私の父が彼の母を殺したのだから」
(サイトの紹介文より)
 
 綿密に組み上げられたストーリーの鮮やかさに、読み進めるほど、来し方を振り返らずにはおられません。とにかく一切の予断なく読んでほしい物語です。(そういう意味では、四章の終わりに作者さんが自ら記された注釈も、二周目の楽しみに取っておくのをオススメいたします……)
 それは、あまりにも美しく、完璧な、それでいて傷だらけな愛。一転、二転と、様相を変える物語に翻弄される快感をどうぞ。

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Contract Lover

らぶはぴ  
「愛情を持ってはいけない」
それは契約から始まった。
(サイトの紹介文より)
 
 ある日会社の会議室に呼び出された美沙は、ひょんなことから上役の契約上の(しかも秘密の)恋人になることに。
 次第に彼に惹かれてゆくものの、折にふれ「契約」であることを思い出しては自制する美沙さんの様子に、読んでいるこちらまで切なくなってきます。
「ああ、これは演技なんだ」そう自らに言い聞かせては、「リアルなおままごと」を続行する彼女と彼の行く末を、目頭を熱くしながら見守りました。

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氷中花

LOVE NOTE  
女子高生と教師の三角関係モノ。三人称。シリアスじれじれ系。(一部R-18)
好きな人を忘れるために選んだのは凍えるような目をした喪服姿の行きずりの男。
入学式の日に思いがけず再会した二人は・・・。
(サイトの紹介文より)
 
 タイトルどおり、冴え冴えと身を切るような寒さの中、それでも懸命に咲こうとする花のような物語です。
 何も知らなかった行きずりの関係から、生徒と先生という禁断の枠組みの中に、そして更に思いもかけなかった複雑な運命のもとへと、放り込まれてしまう二人に、もどかしさとやりきれなさに身悶えしながら読み進めました。
 脳裏にまざまざと浮かび上がるラストシーンの美しさには、ただただ感無量です。

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華の誘惑

A-seat
  • 作者:文月 柊 様
  • 掲載サイト:A-seat R18
  • 備考:一部性描写あり
 
彼女を初めて見た時、自分のものにしたいと思わざるを得なかった。
十六歳の誕生日を迎える[優花]を、十年間待ち続けた[雅臣]。それが愛なのか、戯れなのか。気付くまでには、更に時間が必要だった
(サイトの紹介文より)
 
 流れるような文章が描き出す、美しくて、官能的で、それでいて眩暈がするほどに澄みきった空気が素敵です。
 十九歳も年下の優花ちゃんをこれでもかと翻弄する雅臣氏が、その実、逆に彼女に心乱されているさまが、たまりません。これぞ歳の差恋愛の醍醐味、と、一人にやにやしどおしでした。
 互いに寄り添ったかと思えば、また離れ、そうやって少しずつ心を重ねていく二人に、訪れる試練の数々。まるで映画を見ているかのようなドラマティックな展開に、何度も感嘆の溜め息が漏れました。

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和菓子さま 剣士さま

日々楽々  
高三でようやく青春することができた慶子さんと
和菓子屋の若旦那(?)との未知との遭遇な物語。
季節の和菓子も出てきます。
(サイトの紹介文より)
 
 部活に進路に悩む高校生の日常を描く、青春群像です。丁寧でしっとりとした語り口が、まさしく上品な和菓子のようで、もう、いくらでもおかわりしたくなります。
 特筆すべきは、穏やかでおっとりとした慶子さんの、最強天然ぶりです。嫌味も無ければ、わざとらしくもない、読み進めるほどに、慶子さんが慶子さんである事に深く頷き、そしてホロリとさせられてしまう。そんな彼女の目を通して見た世界の、なんと愛しい事か。
 全編を通じて慶子さん視点の情景にもかかわらず、他の登場人物の心情が読み手にきっちり伝わってくるのが、また素晴らしくて。彼女ならではの独白も合わせて、隅々まで楽しませていただきました。

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夏の女王

鈴の鳴る場所呟きの歌  
――私は女王の国にいる。(サイトの紹介文より)
 
 ほんの少しだけ未来――いつ現実と重なってもおかしくない、未だ来たらぬ世界――のお話です。
 静かに語られる、夏の思い出話。見慣れた懐かしい風景が、少しずつ、少しずつ、既知のものから乖離していくさまに、すっかり虜になりました。淡々とした文章に変わりはないのに、途中訪れるカタルシスはあまりにも劇的で、一瞬にして鳥肌が立ちました。今でも、思い出すだけでみぞおちの奥が締め付けられるような気がします。
 ぎらぎらとまばゆい日差しの中、紆余曲折の果てにそれでも前を見つめる主人公の姿が、とても美しいです。
 昔懐かしい翻訳SFを彷彿させる雰囲気も、もろにツボに嵌まりましたv

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愛などない / 30度の傾斜角

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
真面目で厳格な女教師・一乃だったが、生徒会長・白倉の罠に嵌められ、翻弄される。白倉の思惑とは…?(サイトの紹介文より)
 
「愛などない」と「30度の傾斜角」。この二つは、二人の出会いにまつわる出来事を、それぞれの視点で描き出した、表裏一体の物語です。
 同シチュエーションを男女双方の視点で描く手法は、決して珍しいものではありません。語り手の視野を狭める事で、お互いの人物像にそれぞれ齟齬を生じさせ、「あの時コイツってばこんな事を思ってたんだ」的な意外性をもって、読者を引き込む技法です。
 ところが、この二作の場合、それぞれ主人公の目を通して物語が展開しているにもかかわらず、相手の心情が読み手にも充分伝わってくるのです。まず、これが凄い。どちらを読んでも、一乃さんは一乃さんであり、白倉氏は白倉氏なんです。お互いの表情も、そこから読み取る事の出来る感情の起伏も、二つの作品でブレる事はありません。
 なのに、「30度の傾斜角」を読んだ途端、世界の奥行きが一気に広がるのです。白倉氏の人物像にしても、過去について筆を割かれた文字数以上のものが、彼の背後から感じ取れるのです。とにかく、凄い。単純に双方向の視点で物語が二本分、ではなくて、もっともっと沢山の物語が相乗効果で生まれてくる、それが凄い。
 
 とにかく、予断無しで作品世界に浸っていただけたら。と、いつもにも増して抽象的な紹介文で失礼いたします。

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Sustainability(サステイナビリティ)

  • 作者:シュンイチ 様
  • 掲載サイト:毎日小説を書く R18
     (閉鎖されました)
  • 備考:一部性描写・残酷描写あり
 
 それは、刹那とすら言い表せない瞬く間の出来事。
 気が付いた時には、辺りは一面の血の海と化していた。
 
 プロレスラー志望の高校生・森嶋学が、武術の心得のある同じ学校の女子・大貫明日見とともに巻き込まれた、凄惨な事件。帯剣した謎の老人、それを追う男、暗躍する組織……。
 絡み合う糸が解きほぐれた最後の場面、思わず感嘆の溜息がもれました。謎解きの爽快感は、ミステリさながらです。血みどろな表現に抵抗のない方、是非読んでみてください。
 一部、性風俗がらみの描写がありますが、対照的に主人公コンビの爽やかさたるや、もどかしいほど。もう、明日見ちゃんが凛々しくてカッコイイんですよ!(力説

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忘れてしまおう

呉ノ朱
  • 作者:呉ノ 朱人 様
  • 掲載サイト:呉ノ朱 R18
  • 備考:一部性描写あり
 
君が好きでした、とてもとても。
けれどもう、忘れてしまおう。

 
 冒頭のこの一文を読んだだけで、見事に心を持って行かれました。
 若名千鶴がふとしたはずみで学校の下駄箱で見つけた紙片に記されていた、恋文。僅か数文字のその文章が、彼女と、彼女を取り巻く人々との関係を、静かに静かに変化させていきます。
 恋に恋する年代の、どこか夢見がちで、そのくせ妙に現実的な複雑な気配を、しっとりとした筆致が見事に描き出しています。何よりも特筆すべきは、その恐るべき構成力! 読み進めるほどに、鳥肌が立つ思いに襲われました。

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